047 王宮とお茶会とステルスと よん
王宮編着地します。
いや、よくないがな(なぜか方言)。
てかなんで自分にけがさせたやつに責任とってもらわなあかんの、アアン?
発言からしてこの頼りなさげで自分で責任とれなさそう(もしくは取りたくなさげ)なこの人が国王なんだろうけど、自分の息子の話なのに投げやりとか、あんまりじゃね?
だからこその王妃さまと第1王子なのか、そうか。
でもだからといってこの怒りを鎮める理由はどこにもないがな!
「さいしょうさま、このばのはつげんに……」
「書記官はいない。身内の発言を不敬に処すこともない。言いたいことは言っておきなさい」
ありがたいお言葉頂きましたー。では、遠慮なく。
「責任をとっていただくのはかまいません。けれど、その責任のとり方で自分にケガをさせた方との婚姻はありえません、絶対に。できるなら2度と顔を見たくないというのに、なぜ好きでもない人と一緒にいなければならないのですか。むしろそれなんて地獄、精神的拷問ですか死ねとおっしゃいますか」
「同意だな」
「合意なき婚姻は有り得ません、そんなに婚姻させたいのなら、あちらに適任者がいますよ?」
「「……ああ」」
色んな水分を蒸発させていたご令嬢に視線を送ると、王妃さまと宰相さまがそろって頷いた。ビクッとするご令嬢だが、喜べ? 献身的に守ろうとした好きな男が手に入りそうだぞ?
「なんでこのおれ様がお前なんかにっ!!」
突然怒鳴って、右手を振り上げてこっちに向かってくる第2王子の足をイディアさまが引っかけた。素敵。
ぶべっ、と顔から絨毯に突っ込む阿呆。ケリィゼさまがどこからか取り出したひもで、手足をつないで結んでた。グッジョブ!
「なんであれ、私はお断りです。しろと言うなら死にます。……王族の方には失礼ですが、本当に反省した謝罪で結構なのです」
謝りそうにもないけどな! それどころか逆恨みされてるっぽいし。まぁ、セレイアさまに向かう怒りが私に向いてれば問題ないな。2度と会う気はないし。
「それでは王族としての矜恃が」
「それは今必要ですか? いらないものを押し付けるのが謝罪ですか? 被害者の心に寄り添って頂けないのなら、謝罪も結構です」
考え込んだ王妃さまをぼんやりと見る国王陛下。力関係がわかりすぎじゃないか?
「レンさまが王宮に来たくないのでしたら、わたくしもご一緒しますわ」
「セレイア嬢!?」
「わたくし達はセレイアさまに従いますわ」
「娘達に無理強いをするつもりはない」
わぁ、宰相さま王宮側じゃないんだ、びっくりー。セレイアさまは王子と結婚とかどっちでもいい、てかどうでもいい人だからなー。なんでそこだけお貴族さまなんだろう。
「わたくし、未来の旦那さま候補より、皆さまとの今が大事ですのよ?」
「嬉しいですわ、セリィ」
「わたくしも皆さまと出会えて本当に嬉しいわ、リリィ」
セレイアさまは鋭いナイフをお持ちです。第1王子の胸に深く刺さったみたいだけど、気にしない。
「誠に、セレイア嬢はよい友を持たれましたわね。あなた方、見習いなさいな」
王妃さま、なぜに国王陛下を見るんですかね。宰相さま、そこで無関係アピールとか友達だと思われたくないんですねわかります。第1王子殿下、セレイアさまに上目遣いはやめましょう、かわいいけどキモイです。
手足の自由を奪われて芋虫になってる息子に、ブリザードな視線を向けたまま、王妃さまは宣言した。
「王妃の名において、トゥレン・ハリェス子爵令嬢に、第2王子が近づくことを許しません、またハリェス子爵令嬢が第2王子を避けることを許可します。第2王子の再教育はわたくしが担います。王族として相応しい振る舞いが出来るようになるまで、公の場への出席を禁じます」
「ありがとうぞんじます」
「ちくしょう! お、おまえなんかとはあそんでやらないからな!!」
「は? ああ、はい。それでいいです」
「えっ!?」
だから会いたくないし会う気もないんだよ。この阿呆が。
そんなわけで、第2王子はなにからなにまで基本の基本からみっちりしっかりがっつりと仕込まれているらしい。ちょうどいいからと剣技とかの訓練もやらせてるらしい。
もうちょっとしたら騎士団に放り込んで、さらにガッツリ上下関係とか身分とかに驕らない精神力を鍛えるのだそう。
10年後に初めて会うなら、まともな出会いだったろうなぁ。
どっちにしろお断りだがな!
次は忘れられたシスコン兄ー。マジで忘れてたわ(笑)