044 王宮とお茶会とステルスと いち
皆さまお身体にはお気を付けください。
「お、おまえなんかとはあそんでやらないからな!!」
「は? ああ、はい。それでいいです」
「えっ!?」
嫌な予感がしたんだよなぁ。
どうも。現在進行形でストレス半端ないレンさんです。
朝からやたら張り切ったナディアナさんにドレスアップさせられたと思ったら、トールにかわいく髪を結われ、ポイッと馬車に放り込まれた。そしたらまぁ、あら不思議。
そこが王宮ってふざけてんじゃねぇぞ、こら?
姉さまの威圧がなかったら帰ってたかもなぁ。
「トゥレンさま? いかがなされましたぁ?」
間延びした口調で心配してくれたのは、セレイアさまのご友人になったケリィゼさま。栗色の髪と目のおっとり系毒舌部隊所属のほんわか美少女だ。いや、どんな部隊だよ。
イディアさまとケリィゼさま、そして姉さま。セレイアさまの布陣は整った、その最初の闘いが王宮だと?
お茶会には、セレイアさまの他に婚約者候補達がそろっていた。小さなグループは私達を入れて5つ。それぞれお取り巻きを連れての参戦と見た。
子供なのに女の闘い半端ないなぁ。
庭園でのお茶会は、一応王妃殿下主催なので、まずは王妃殿下に挨拶をする。
「まぁ、よく来てくれたわ。ゆっくりしてらして?」
「ありがとうぞんじます、おうひでんか」
挨拶はセレイアさまがまとめて行う。子爵家の私達は身分的に会話しちゃいけないからね! でも、私が最年少だとかでなでなでされてしまったよ。王妃殿下のお子さまは男の子だけだそうな。
周りの視線が刺さるかと思ったね!
そんな感じで、なぜか王妃殿下のテーブルについたよ、私達。うん、セレイアさまが侯爵令嬢で王妃殿下の次に身分が高いからだね、知ってた。
子供なのに腹の探り合いなんて、伏魔殿かよ。恐ろしや王宮。
ニコニコしながらガクブルしてたら、ざわりと空気が揺れた。本命の登場である。ご令嬢方が狩人に見えるよ、怖っ。
「王妃殿下、本日はお招きありがとうございます」
第1王子は金髪碧眼の美少年。確か10歳。兄の後ろに隠れてる第2王子は2個下の8歳。ムスッとした顔は兄のコピーかと言うほど似てる。てか、なんで不機嫌?
「まぁ、さっそく来たわね。そんなにセレイアに会いたかったのかしら」
「母上!」
「本当のことでしょう?」
「ぅ……」
まだまだ子供である。王妃殿下にからかわれて照れてる美少年眼福ですなー。
「セレイア嬢、久しぶりです。おかわりありませんか?」
「ありがとうぞんじます。元気にすごしておりますわ、でんか」
わぁ、セレイアさま相手にはデッレデレー。これは見ただけで白旗だわ。
第1王子はとりあえず全部のテーブルを回って挨拶をすませると、またセレイアさまの所に戻って来た。犬か。
「セレイア嬢、向こうの花壇に今朝咲いたばかりの珍しい花があるのです。一緒に見に行きませんか?」
「はい、でんか。ぜひに」
必死だなぁ、殿下。でも、のほほんとしてるけど、セレイアさま侯爵令嬢だからね? お貴族さまできないわけじゃないからね?
とりあえず、私がついてくことをアイコンタクトで姉さまに確認して、椅子から降りた。ふたりの世界を邪魔しないように、気配を消して歩く。まぁ、ステルスだから気付かれないけどさ。
ステルスのおかげで見えるものが多いから、人に紛れる時は私が適任だ。あ、ほら。
「……まえ、が」
なんか、あれやばくね?
「お前がいるから!」
「セレイアさま!!」
悲鳴が耳に突き刺さった。うるさい。
私の敵は杉花粉ですがね!