42 その名はルルーリア
いっそあっぱれと言うかなんと言うか、もう(笑)
「あたしはルルーリア! なのったんだからともだちね!」
お友達の定義を、お貴族さま的にも個人的にも履き違えてるとしか思えない彼女は、にこにこと名乗った。
その頃には、私達との間に護衛さん達の肉壁がそそり立ってたからよく見えなかったけど、彼女がそれを気にした様子はないようだ。
いや、ちょっとは気にしろよ? 侯爵家でやらかしてるんだぞ? 周りは敵だらけなんだぞ? あー、気にしないんですねわかりません。
どうも。迷惑極まりない招かれざるお客さまに早よお帰りいただきたいレンさんです。
「セレイアさまとイディアさまはひなんを」
姉さまがふたりを裏から逃がすために、侍女さんに目配せすると、護衛さんと侍女さんが誘導のために近づいてきた。
「ふたりもいっしょよ?」
「みんないなくなったら、どうなるかわかりませんし、とりあえずみとどけます」
「レンがのこることはないわ。わたくしがのこります」
姉さまこそ逃げてほしい。あの脳みそまで真っピンクな子と関わってほしくない。もちろんセレイアさまとイディアさまにもだ。あ、琥珀もね!
今もスカートの中にいるはずの琥珀にわかるように、出てきちゃダメだよ、とぽんぽんするとみぃと小さく声が聞こえた。ほんとどうなってるかはわからない不思議仕様だけど、片時もそばを離れない琥珀がいるだけで心強い。
「ねえー! おともだちほしいのにむしするってひどくなーい!? さすがあくやくれいじょうだよねー! ヒロインのあたしをいじめるんだねー!!」
聞き捨てならねぇな、オイ。だれが悪役令嬢だと?
でもこれでわかった。彼女は私と同じ転生者で、この世界を乙女ゲームかなにかと勘違いしてるんだ。じゃなきゃあのセリフは出てこない。どう見てもヒロインはセレイアさまで、あっちはヒロインとは思えないけどなぁ。
「わが愛しの妹に暴言とは、命が惜しくないらしいな」
「そもそも、客人の態度とは思えないが?」
死にたいのか? と副音声が聞こえた気がする。
声と共にセレイアさまを挟んで現れたふたりは、侯爵家の長男次男だ。誰が見てもイケメンなふたりは残念なシスコンである。
「エル兄さま、シル兄さま」
「エルにいさま、シルにいさま。いつおかえりに?」
「ついさっきだ。よくセリィを守っていたな、レン」
セレイアさま関係でいつの間にかそれなりに仲良くなったら、兄さま呼びを許可された。素直に呼んでおいた。うちの残念兄よりマシだし。隣の芝生は真っ青だ。
「で、シルにいさま。そのみぎては」
「うん? ああ、侯爵家の者が情けない姿を晒す訳にはいかないからな、少し鍛錬をしてきたのだ」
シル兄の右手には3男くんが握られてる。てか、その姿の方が情けないんじゃね? 気絶してるのか引きずられてるんだけど。
「ちょぉっとぉーー!! またイケメンひとりじめぇー!?」
キィーッと声が上がる。見た目だけで判断するとかないわー。
「あれどうにかなりませんか?」
「父が来るだろう」
大人に任せるんですねわかりますー。
言葉が通じない宇宙人とは話すだけ無駄だもんなー、面倒。
大人に丸投げは今だけの特権ですから!(キリッ)