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039 自由と我儘はちがうもの

皆さま雪は大丈夫ですか?


 阿呆が力なく座り込んだ時、ようやく父の馬車が門から突っ込んできた。すごい勢いで。遠心力で馬車が振り回されてるけど、うん、まぁいいか。いやいや、もう少しスピード落とせよ。事故るぞ?


 馬さんがいい仕事したぜとばかりに鳴いて馬車は止まったけど、急ブレーキみたいな感じで……うん、確かにいい仕事したよ? でも、中の父は生きてるか? ジェットコースター並みにスリリングだったんじゃなかろうか。


「リリー! レン!! 無事かい!?」


 中から転げ落ちて来た父は、ヘロヘロになりながらも私達の方へ駆けて来る。締まらないなぁ。まぁ、そこも含めて父だけども。


 どうも。いい歳の大人を泣かせたレンさんです。


 全速力で駆けて来た父の馬車の後ろからぽてぽてやって来た馬車は、伯爵家のものらしい。お迎えを手配済みとか、やることは早いんだよなぁ。


「さて」


 私は抱きついてスリスリしてくる父を無視して、目の前の子供を見た。


 一応、私達の弟であるこの子供は、理解はできなくとも母親がおかしいことはわかったらしい。抱きしめようとしてくる腕を避けてひとり震えて立っていた。


「ねえ。あなたは、まだじぶんがあととりだとおもう?」

「っ、あ」


 私の言葉に、ビクッと肩を跳ねさせると、首を横に振った。


「お、おもわな、い。でも、どうしたらいいか、は、わからない」


 あらま、随分成長したんじゃね?


「かわりたいなら、その人とはなれることになるけど?」

「え……」


 まぁ、すぐには決められないだろうな。父はそれを察したけど、館には入れられないからとどこかに連れて行った。


 しばらく離して様子を見るつもりなのかもしれない。変われるかどうかを。私は聖人君子じゃないので、その辺はどうでもいい。家族に被害が出なければ、それでいい。


 ただ、弟も最初は被害者だった。最初はね。なにも知らないまっさらな子供を洗脳するのは容易いだろう。その気があったかどうかは別として。


 あの女は、自分だけを愛してる。多分、それはこの先も変わらないだろう。


「では、ごきげんよう。2度と会うことはない罪人の方々」


 私はこれから姉さまのフォローで忙しいんだよ。




 あの後、女と男ふたりは伯爵家領地の奥深くに封じられた。今度こそ自由などない、死ぬまで出ることのない牢獄の屋敷に。


 女は大人しかったそうだ。呆然としていたらしい。父にいない存在としてフルシカトされて、ショックを受けても狂えなかった女は、これからずっとその記憶と向き合うしかない。


 てか、そこまで父に執着しといて不貞ってなんなんだ?


「理解しようとするだけ無駄ですよ。男女の仲は、本人ですらわからないものです」


 ……なんか、意味深なんだけど、執事長?



レンさんは姉さまに説教くらってると思います(笑)

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