034 どこにでもある話。
ギリセーフ! 今年もお世話になりました。
「ぼ、ぼくはおまえなんかみとめないんだからな!!」
はいはい、認めてもらわなくとも結構です。だから、相手にされてないと知ってショックを受けるのやめてもらえません?
どうも。遠くからちびっこに吠えられてるレンさんです。
あれから、セレイアさまことセリィさまとお友達になった。なんでだ。いや、主に姉さまがね。困ったちゃんな兄を持つ妹同士で意気投合してしまったのさ。
同じ年齢でもあることで、特に家からの反対もないらしい。そして一蓮托生なのか私もセットにされた。解せぬ。いや、ほんわかなセリィさま見てるのは楽しいよ? でも、未来の王妃候補とお友達ってナニソレ怖いって感じで、ねぇ?
10日に一回くらいの割合で候補家のお茶会にお呼ばれして、もう数回。件の兄達にも逢った。うちのバカシスコン兄と同じ臭いがしたわー。ないわー。
姉さまの美少女っぷりににこにこして、私を見て顔をしかめてくれやがった。私より姉さまとトールが怒り狂っていた。絶対あとでなんかされてるだろうな。セリィさまに「お兄さまむこうに行ってらして?」と冷たく言われてショック受けてたけど。
妹のお友達を貶してなぜ優しくされると思ったんだ、阿呆が。まだ少年と呼ばれる年だろうが、子供だから許される事の範疇からはみ出したらいかんだろう。
てなことを遠回しにやんわりとオブラートに包むのを忘れてスパッとやっちまった結果、何故か敬語で接してくるようになった。あらやだ、私としたことがうふふ。
まぁ、そんな感じで兄ズは落ち着いた。跡取りとしての教育がきちんとされていたお陰か、お貴族様にはならなかった模様。なってたらご両親が黙ってなかったろうなぁ。結構激しそうだし、奥方さま。
落ち着かないどころか、敵認定してくれやがったのが、セリィさまの弟くんである。
私より下の4歳児は、乳母さんに甘やかされたようでなかなかのミニ暴君だった。あらあら、と奥方さまが笑って躾け直す宣言してらしたけども。乳母さん、自分の子のように育てちゃったらしく、奥方さまを母親と認識してなかったらしい。それってどうなの。
当然クビになって故郷に返されたそうだけど、弟くんを一緒に連れていこうとしたり、弟くんがかあさま!! と泣き叫んだり大変だったらしい。なにがしたかったんだろう、乳母さん。
てか、貴族の家にしてはちゃんと家族な侯爵家で、なぜ乳母さんの暴走が止められなかったのか。
「お母さまは、おとうとをうんだときにすこしおからだをこわされたの。それで、うばにあずけっきりになってしまったのだけど」
それに加え、乳母さん自身が弟くんを囲いこんだのもあったようだ。優しい虐待がこんなところにも。どこかの誰かのような手遅れにならなきゃいいねぇ。
まぁ、遠くからきゃんきゃん吠えてる程度なので、実害はない。唯一絶対的な味方がいないから、あれ以上のことはできないだろうし。大人になった時の黒歴史にならないことを祈るよ、少しだけ。
穏やかなようで、外野が騒がしいお茶会を終えて、ようやく帰る。馬車が門を越えた辺りで、何故か止まった。外が騒がしくなったので、様子を見ようと小窓のカーテンを開けようとしたら、「このままお待ちくださいませ!」と外からカギをかけられてしまった。何事?
でも、扉に近づくことはしない。危険だからと言い含められている。隠れるために座席を外して、姉さまを促す。
「なにがあったのかしら」
「ごえいのかたのきびしいこえがしますから、まねいてないおきゃくさまなのでしょうね」
「なら、早くおかえりいただかないとこまるわね」
「みなさま、だいじょうぶでしょうか」
好奇心に負けてちょっとだけ盗み見る。
「……うわぁ」
招かれざる客は汚れた男女とこどもがひとり。
波乱の予感がビシビシである。
来年もよろしくお願いいたします。くわしくは報告にて!