032 面倒事は丸投げ、だって子供だもん
そろそろタイヤ交換をせねば。会社坂の上なんですよねー(笑)
「レン! 大丈夫だったかい?」
すっかり子煩悩パパになった父が駆け寄ってくる。手を出してきたと思ったら抱き上げられた。おい、ここ他所のお家! 挨拶ができないじゃん!
「おとうさま!」
「怪我はないかい? 火傷は?」
「ないです」
そのまま座っていたソファーに戻ると、隣に降ろされた。過保護だっつうの。姉さまの呆れた視線に気づけやこら。心なし同じソファーに座っていた姉さまに寄っておく。
どうも。現在進行形で逃げたい気持ちしかないレンさんです。
「ハリェス子爵令嬢には、誠に申し訳ないことをした、すまない」
ぅおい!? 侯爵さまに謝られたよ!? 隣にいる侯爵夫人もうんうん頷いてる。
オールバックな金髪がキラキラしてるダンディーなおじさまは、眉間にシワを寄せていた。跡ついちゃったらもったいないなぁ、イケメンなのに。
「我が家であのような侮辱行為を許すとは痛恨の極みだ。怪我がないのが幸いとは言え、それで済ます訳にはいくまい」
宰相閣下でもある侯爵さまは、どうやらまともな貴族のよう。私のような子供相手にも真摯な姿勢を崩さない。うん、国は大丈夫そうだ。
「もちろん、伯爵家にはそれ相応の罰と賠償をしてもらうことになるが、ご令嬢の望みはあるかね」
問いかけられて、父を見た。頷いたので姿勢を正す。
「わたくしからはなにものぞみません。わたくしがしなくとも、はくしゃくけがただですむとはおもえませんし、ごれいじょうからのしゃざいはうけております。このさきのごれいじょうをおもえば、じゅうぶんなばつにもなりましょう」
そうなんだよね。侯爵家に睨まれた上に敵認定。これは恥をかかされたのでしょうがない。この時点で貴族としては窓際に追いやられることになる。
そして、お貴族様達は噂話が大好きだ。自分に害のないゴシップなんて特に盛り上がるし、無いこと無いこと話が広がっていくだろう。目撃者多数だし、口封じは無理無駄無謀。
よぼど面の皮が厚くなければ、貴族社会にはもう出てこれないレベルの醜聞なんだよね、これ。
領地に引っ込んだとしても、いやそれをしたら余計にご令嬢に貴族との結婚はできない。貴族人生詰むしかないのである。
結果、私がなにもしなくても伯爵家は落ちていくのみ。自業自得としか言えないのだ。
「それは構わないが、いいのかね」
「はい。ただ、さきほどもきいたとおり、ごれいじょうはだれかにそそのかされただけのようですので」
「それは調査させている。主犯ではないが許されはしないことは分かってくれるか」
「はい」
父の視線がうるさいが、私はこれでいい。人の人生潰して笑える貴族じゃないんだよ。
「……なんだかご令嬢と話していると、大人と接しているような気がするな」
あ、よく言われます。
「では、残りは大人だけで詰めようか。いいかね、子爵?」
「もちろん、異存はございません」
ヤル気だな、父。てかちょっとは手加減しろよ、父?
やれやれ、ようやく帰れると立ち上がろうとした時、侯爵夫妻に挟まれて座ってる美少女が声を上げた。
「では、わたくしとおちゃをごいっしょしてはくださいませんか?」
フラグとかテンプレとかいらないんだけどどうしよう、これ。
ちなみに、昔某エス⚪ィマだった時上りきれなくて、バックで滑り降りたことがあります(笑) 坂道怖い。