031 自称ヒロイン参上(笑)
そしてなにもせずに退場と(笑)
塊かと思ったら女の子だった。彼女は真っピンクなドレスにレースもピンク。リボンもピンクならアクセサリーもピンク。おまけに髪もピンクブロンドときた。お前はぺーとぱーでひとつな人達か。
目に痛いピンクをスルーしてもいいですかダメですかそうですか、ちっ。
どうも。いい加減この目立ちまくりな舞台から降りたいレンさんです。
元お取り巻きな彼女は、使用人に促されて大人しく去っていった。大分正気に戻ったのか、私にお辞儀をしたので、私も返した。
「許してあげなくてもいいのに」
ぽそりと姉さまが呟く。激おこなまんまだが笑顔です。貴族モード半端ねぇ。
「かのじょのさきをおもえば、このくらいはしてさしあげてもよろしいかと」
もう貴族ではいられまい、あの子。家そのものが存続の危機とも言えるだろう。事実を知ってからの未来を思えば、これくらい優しさにもならない。
「いったーい!」
元お取り巻きに体当たりしようとして失敗、派手に転がったピンクは大げさに騒いで立ち上がった。ちなみに助けてくれる人はいなかったし、今の今まで放置。遠巻きに輪ができてる。うん、わかるよ。貴族としてもご令嬢としてもお近づきになっちゃいけないオーラが半端ないんだもの、彼女。
「レンさま、こちらへ」
戻ってきたトールにエスコートされて輪を抜ける。姉さまとラストルが続くと、まっていた侯爵家の執事さんが先導してくれた。
「あ! まってよー!」
ホールを出た私達を追ってくる声。子供だから高いんだよね、キーンと耳に痛い。てか、貴族の礼儀作法をどこで落とした? と言わんばかりの行動だな。いくら私だって家でもやらないぞ?
侯爵家の執事さんが片手を上げた。
「まってってばー! きこえないのー!? ねー、え? ちょっ!?」
振り向けないけど、侯爵家の家令がなんかしたんだなきっと。声が聞こえなくなった途端に静かになった。
私は他所のお家の風呂に放り込まれた。侯爵家の侍女さんに上から下まで洗われて拭かれてドレスを着せられてドレッサーの椅子に座らされた所で、トールにバトンタッチされた。
我が家もそれなりにお高いドレスだけど、それより高そうだな、これ。青いレースを重ねたふわふわなドレスは、派手には見えないがあちこちに細かい刺繍やら宝石やら細工されてて、もしかしなくても侯爵令嬢のものだろうか、だろうな。
「レンさまのドレスはしみぬきごにへんきゃくいただけるそうです」
私の髪を器用に編み込みながら、トールが説明してくれた。やっぱり侯爵令嬢のお古ーー新品にしか見えんがなーーだそう。ちなみにお詫びにくれるって。太っ腹ー。
そうして、トールにエスコートされてやって来たのは、関係者勢揃いの応接室。
なにやら面倒なことが続きそうである。
次回侯爵令嬢セレイアさま参上予定(笑)