029 悪役令嬢とお取り巻きと真のバカ
お久しぶりです。見捨てないでくださってありがとうございます。
悪役令嬢もどきにはマジガチな意地悪お取り巻きがおりましたとさ。
どうも。先日悪役令嬢になりそこなったご令嬢を、ついうっかりフォローしてしまったレンさんです。
侯爵家からは後日お礼が来たので、姉さまがやんわりと教育方針の見直しを伝えたそうだ。使者もわかってたらしく、約束して帰ったらしい。できるならご令嬢と仲良くしてほしいとも言ってたけど、身分差があるだろうよ。
そうして、しばらくしたらご令嬢はほんわか明るい天然令嬢にジョブチェンジしてた。元々そっちが素なんだろう。なぜ悪役にしようとしたんだ、マジ謎。
そんな感じで周りとも仲良くやり始めたんで、安心だねと姉さまと笑ってたら、ご令嬢の後ろにいたお取り巻きからの嫌がらせが始まったのさ。わぁ、テンプレー。
しかし、子供のやることなんで見え見えな罠。足とかお茶とか軽く避けられるものばかり。トールにまで見破られて、従者経由で親の知るところになったらしい。
だからあんた(私)のせい! って逆ギレも甚だしく突っ込んで来たけど、衆人環視の中やるからバレるんだよ?
挙げ句トールが華麗に私を救うという、いらんイベントまで発生させやが、げふげふ、まぁ、ご令嬢が黄色い悲鳴を上げて喜んだってことで。
お取り巻き達は侯爵家からお付き合いをお断りされたそうで、てかご令嬢を悪役にしようとしたのはお取り巻き達の独断だったとかでそれが最大の理由だろう。
「こはおやをみてそだつ、ってほんとねー」
「レンさまはちがうと思いますが」
「わたしのおやはねえさまだもの」
「たしかに、リリアナさまはかんぺきなレディですが」
「ラストルがさいしょからまともならねぇ」
お似合いだったろうに。まぁ、姉さまのお眼鏡に適うのは大変だろうけど。
今日参加している侯爵家のお茶会は、今まで出席した中でも最大級の規模だった。大人と子供と分けられていても人で溢れている。
ヘタレ父も大人の方に参加している。私と姉さまの心配をしてたけど、自分の花嫁探してこいやぁと執事長に放り込んでもらった。やれやれ。
ラストルは姉さまのエスコートをしている。すぐに決まるかと思った婚約はまだ姉さまの意思で先延ばしになっているので、我こそはとやってくる婿候補を牽制するために。見た目はいいからなー、ラストル。
正直、それならトールの方が適任だと思うし言ったんだけど、姉さまとトールからダメ出しされてしまった。なぜだ。
トールといるとステルスが意味ないんだよ、面倒。今までのお茶会である程度お近づきになりたいご令嬢は決めていたから、挨拶は終えている。今度小さなお茶会しましょうと約束済みだ。
侯爵令嬢へのご挨拶は最初にしてあるが、なぜか後で一緒にお話しましょうと誘われてしまった。やだなー、目立ちたくないんだよー。
「レンさま、」
「え?」
ぱしゃん、と音がした。同時に生温いなにかに包まれる。水色のドレスに茶色い染みが広がっていく。
ざわり、と空気が震えた。
「あんたのせいよ!!」
こん、のド阿呆が……!!
ようやく流れができたかな、と。