幕間 トールくんの家庭の事情
ぐだぐたです。
「えーと、それで、私になにを話せと?」
いやいや、わかってんじゃん? 知ってて知らないふりとかいい大人のすることだけど愉快じゃないよね?
「まぁ、そのような日常が当たり前ですしねぇ」
いいからとっととすみやかにわかりやすく吐けや。
「私はトールの父で、」
あ、名前はいいよ。トール父で統一。長いの覚えられないし。
「……で、ミリーヤの夫です。執事長の補佐をしております。執事長の父君は未だ現役で、領地の邸で執事長をしております。私は数年、領地で執事として父君に学び、こちらに戻りました」
これに巻き込まれたのがトールだね。
「巻き込んだわけではありませんよ。元々はミリーヤも共に行く予定でしたし」
突然乳母になったりで残ったんだよね。しかし、そこでなぜトールを連れて行ったわけ? ミリーヤはトールも一緒に残すつもりだったのに、夜が明けたらいなかったらしいじゃん。
「主のお嬢様とわが子を一緒に育てるなど、許せることではありませんでしょう」
だからトールに嫌われるんだよ、頑固者。
「嫌われてなどおりませんよ」
知らぬは本人ばかりなり。母親の愛情が必要な時期に引き離されて、恨まないわけないじゃん。しかも父親にも放置されたらしいじゃん? よく素直に育ったなぁって思ったら、執事長父の奥方が育ててくれたそうだね。
そんなんでよく父親だなんて堂々と言えるよね。威張ってるとしか思えない。義務も権利もなにひとつトールに要求しないでね、烏滸がましい。
「……家族のことですので、」
トールに無視されてるのに? ミリーヤと仕事の話しかしてもらえないのに?
「…………」
あのさぁ、ほんとに今変わらないと捨てられるよ? わかってるんでしよ?
私には関係ない? なわけないでしょ。バカなのアホなの? ……このど阿呆が。
このあとむっちゃくちゃに罵り説教かました。
「自業自得でしょう? というか、主のお嬢様になにを言わせているのですか」
執事長にも呆れた眼差しをもらったトール父。反省しろやこら。
「放っておけないのはわかりますが、家族のことに深く関わるものではありませんよ」
レンさんはトールとミリーヤの味方です!
「……貴族としての行いとはおも」
「貴方はきちんと反省してふたりに謝罪しなさい」
私にもな。
「…………」
なにさ。
「そう言えば、とある伯爵家のご次男が婿養子候補として隣国に渡ったそうですよ」
「旦那さまの取引先ですね。あちらは思わぬ人材の獲得を喜びこちらとの取引が増えたとか」
……へー、よかったねー。
「お茶会で陰ながら暗躍しておられる方がいらっしゃるとも聞き及んでおりますが」
暗躍とは穏やかじゃないねー。
「ほどほどになさって下さいね」
はい。
この後、トールくんの後をつきまとうトール父の姿があったとかなかったとか。
トール父の誠意が通じたのかは、誰も知らない。
もっと穏やかにレンさんの一年を語るはずが、どうしてこうなった。レンさんフルスロットルです。トールの一件が気になってた模様。