002 初遭遇は姉
なんとか週一更新に落ち着きたい。頑張りますが、まだかかりそうです。
どうも。トゥレンことレンです。
本宅から聞こえた(らしい)深夜の高笑いの翌日。弟爆誕の一報は私の目覚めと共に、だった。いや、ほんとにしたらしいよ? 高笑い。小指立てて頬に添えてたかどうかは知らんけど。あんまりな笑い方に、とうとう狂ったかとか思われたらしいよ。感情の起伏が激しい人なんだな、きっと。
よっぽど嬉しかったのか、自分で育てると言ってるらしい。出来るかどうかは知らんけど。現代みたいに親が子を育てるのが当たり前の世界じゃないからね。
顔も名前も知らない(聞いたけど長すぎてわかんなかった)弟がマトモに育つことを祈る。
他人事のように見えるし聞こえるだろうけど、母親に対する感情はこれといってないんだよなぁ。だって会ったことないし。多分産まれてすぐ乳母に抱っこされた私を見たことも抱いたこともないだろう。なんせ発狂。
ある意味、他人より遠い人かな。ミリーヤさんとナディアナさんの方が、よっぽど家族の愛情をくれるからねぇ。
「レンさま。本当におひとりで行かれるのですか?」
ほら、こんな風に心配とかしてくれるし。
「とおくにはいかにゃいかりゃ」
「お早めにお戻りくださいませね」
「あい」
ナディアナさんが私に帽子をかぶせてアゴの下でリボンを結んでくれた。子供用の柔らかくて軽い帽子は日差しをバッチリ遮ってくれるもの。
ミリーヤさんはリュックを背負わせてくれた。これは私があれこれ注文をつけて作ってもらったもの。バスケットとかじゃ手が塞がるし重いし、子供の持つものとして作られてないんだよね。ほら、貴族は荷物を自分で持たないから。
けど、私はお散歩に飲み物とおやつを持参したいのだ!
そんなわけで身振り手振りもつけてあれこれ話し、ミリーヤさんとナディアナさんの解釈のもと、デザイン図が完成。あとは理想通りのリュックを待つばかり。そして出来上がった。
高そうな真っ白の布地に、所々レースが編み込まれたかわいらしいリュック。2歳児には似合ってましたとも。中身がシンプルイズベストな私じゃなければな!
いや、ふたりは悪くないんだ。むしろ私のために一生懸命レース編んでくれてたの知ってる。超嬉しかったしリュックも使いやすい。ただ、恥ずかしいってだけで。
ふたりがくれるものは、疑いようがない愛情だ。見返りを求めない、無償の愛。仕える家の娘である私に、優しく見守り時に叱り一緒に笑い泣き喜んでくれる彼女達は、絶対に私を裏切らないと思える。
だから、私も彼女達が大好きだ。中身がこんなんでちょっと申し訳ないけど。
「お気をつけて」
「あい!」
さぁ、出発だ!
私が住む離れと本宅の間には森(にしか見えない)がある。今日の探検の目的地はそこ。そんなに深い森ではないし、小川もあるとのことなので小さい私には十分だし、なにかあったらすぐ駆けつけられるのが許可された理由だろう。
小川については、ミリーヤさんからしつこいくらいに注意を受けた。前世で、水が5センチあれば溺れることができると聞いたことがあるので、ちゃんと聞いて頷いておいた。
ウキウキと真っ直ぐ歩いて森に入ると、適度な間隔に植えられた木のすき間から漏れる日差しが眩しくてキレイ。作られた美だけど、安全性はバッチリなので遊び場になりそうだ。
ベンチがあればなおよしなんだけどなぁ、とキョロキョロしてたら、どこからか小さな泣き声が聞こえた。小さな子供のような泣き声を探して、森を進むと大きな木の根本に女の子が座っていた。
ふわふわの金髪にアーモンド型の緑色の瞳、泣いてても美少女。てか、金髪に緑色の目って子爵家の特徴じゃね? あ、ちなみに私は栗色の髪に琥珀色の瞳の地味な幼女だ。母方の実家の特徴を受け継いでるので、子爵家の誰にも似ていない。わぁ、なんか色々問題になりそーう。
いやいや、そうじゃないって。いや、それもあるんだけどもさ。だからつまり、この目の前の美少女って。
現世の私の、初めて会う姉ってことかい?
レンさん、姉に会う。