027 ごきげんよう、さようなら
レンさんは、前世の幼なじみ達が美形すぎて自分は普通顔のモブだと思い込んでます。美少女だからこその回りの反応です。
問題は私のドレスが水色だってことだけだ。
え、違う? そこは気になるから気にすんなー。
さて、幼稚なイタズラ的手法ですがやるだけやってみよう、だって失敗しても笑って許されるもん! 4歳ってすばらすぃー。なレンさん、引き続き誕生パーティー中です。
現在も大人の中を泳いで逃げてるけど、しつこく諦めないおバカのために策を練ったとこさー。
そばを離れてたトールが持ってきたのはクリームイエローのストール。それをみんなが見てる中で私にかけてくれた。
「ありがとう、トール」
にっこりと、笑顔でお礼を言うと、珍しく視線を逸らされた。なんなの失礼な。顔赤くするほど笑いをこらえなくてもいいじゃんか。
「レンさま、おちますよ」
ストールを整えてブローチでとめてくれたのはラストル。
「ラストル、ありがとう」
こちらも笑顔でお礼を言うと、ぽんっと真っ赤になった。だから君達私に失礼だっつうの。
でも、まぁ種はまいた。奴が見てたのは確認済みだ。これで私は黄色いドレス姿に見えなくもない。さ、逃げるよ!
目標は姉さまに挨拶しようとして並んでる。あと少し時間稼がないとなー。
「レンさま、むこうがあせってきています」
「ちちおやになきつい、なきついています」
「うん、そろそろだね。トール、あにをねえさまのとなりに」
「はい」
大人の中にいる私は、景色がよく見えない。足だらけだもの。それは向こうも同じだろう。視界って大事だよね。
もう少しで姉さまの所、という時に私は腕を捕まれた。
「わたしとこんいんしてください!」
「まぁ」
どこかの伯爵家の親子は、黄色いドレスのお姉さんを捕まえて求婚していた。
伯爵はお姉さんの腕を掴んで。息子は手を握って膝をついていた。まぁ、ロマンティックー。
私は腕を掴んで引っ張られたまま、トールにぶつかっていた。ナイスタイミング、トール!
「まぁ! うんめいですわね!」
咄嗟に叫んだ私は拍手を贈る。ラストルが続いたのを見た姉さまは、そっと微笑んだ。
「とてもおにあいですわ。おしあわせに」
「確かに情熱的だな。素晴らしい運命の出会いだ」
さすが姉さま、ナイスアシスト! ついでによくやった、兄。
ふたりが拍手を贈ったので、周囲からも拍手か巻き起こる。周知徹底完了。オタオタオロオロしてるだけの伯爵親子には、どうにもできないだろう。
「うんめい……」
ポツリと呟いた黄色いドレスのお姉さんは、両手で伯爵子息の手を握った。
「うれしいですわ。そこまでわたくしのことをおもってくださるなんて」
「あ、い、いえあ、の」
「いまからなら、いっしょにおべんきょうもできますもの。しょうらいこまりませんわね。ね、おとうさま」
「そうだねぇ、お婿さんが来てくれるなんて、しかもその方が優秀ならなお良しだねぇ」
優秀かどうかは知らないけど、しつこいくらいの執念があるから大丈夫じゃないかね。
お姉さんのお父さんは、父の取引先だ。隣国のでっかい商会の会長さんで、お姉さんは跡取りなんだそうだ。なので婿とり必須。私いいことしたなぁ。
まぁ、後で姉さまに問い詰められてがっつり叱られたけれども。だってあのバカ鬱陶しかったんだもん。策のつたなさに反省はしても後悔はしない。
人生楽しく過ごすための苦労は即刻切り捨てるべきだからね!
よほどあの伯爵子息が嫌いだったんですねぇ。