026 運命の出会いはいりますか? いいえ、いりません!
レンさんは普通に美少女です。だって姉さまの妹だもの。前世の幼なじみ達の美形率の高さによる弊害です。
婚約者を決めるお茶会はしたくない、とは確かに言った。
その後色々あって父が離縁したり家族関係が修復されたりとかもあった。はい、私が発端ですな。
だがしかし。
4歳の誕生日がド派手なパーティーだなんて聞いてないぞ!?
馬子にも衣装なドレスアップで会場に放り込まれたレンさん、4歳になりました。
水色のふわふわなドレスはかわいい、かわいいがしかし! 着るのは私だよ!? アクセサリーは控えめに、けど映えるように。姉さまコーディネートに苦情が言えるわけもなく。今日の私は動物園のパンダなのだろう。
婚約者を決めない宣言のかわりに、子爵家の跡継ぎ候補として時間を稼ぐのだそうだ。弟はその生産者と一緒に幽閉されてるので、父が再婚して嫡男が産まれるまではそれで問題ないだろうとのこと。
本当は再婚とか言いたくない。私達みんな、あれを妻だなんて認めてないから。今は父に優しい奥さんが見つかることを祈ってる。
弟達は父親候補がふたりもいるから楽しく暮らしてると思うよ? 自分の母親のクズっぷりを目の当たりにしなければ。私にもそのクズの血が入ってることは忘れようそうしよう。
さて本日、子爵家の大広間では私の誕生祝いの宴が開かれている。父の仕事関係とか大人の事情の招待がほとんどで、ちらほら子供の姿が見える。
私は父について挨拶回りをしつつ、子供(ただし男の子だけ)を紹介されていた。いらんっつうの。
たとえ私が女子爵になったとしても、結婚はしない。それは父も納得済みだ。幸せになってほしい、と言われたが、結婚だけが女の幸せと思うなと返事をしといた。
父と私をセットにして、似ていることをアピールしたいという狙いもあると正直に執事長が吐いたので、そこは承知した。噂の火消しと真実の周知にはもってこいだもんなぁ。
そんなわけで本日の主役となったわけだが、どこかの迷惑な伯爵家のバカがなぜか紛れ込んでるのが見えた。会いたくないと言ったら、さりげなく避けて逃げることになった。それができてるのはトールとラストルのおかげだ。あのバカと話すこと自体無駄な時間なのでなんとかならないものか。
ご挨拶しながらも足を止めない。さっきバカの父親が息子が今日求婚するとか言ってたんだけど、誰にするの誰の許可をもらうの親子そろってバカなの?
「レンさま、どうしますか?」
「んー、してもらえばいいんじゃない?」
「あいつとこんやくするつもりか!? いや、するつもりですか?」
まだまだ敬語ができないラストルだが、友人はやめたらしい。いい決断だ。
「わたしとなわけないでしょ。さっきのきいろいどれすのこ、みた?」
「きいろ?」
首をかしげるラストル。周りを見る余裕はまだないらしい。かわりにトールが頷いた。いいコンビかもしれない。
「ぼくたちよりすこしうえくらいのかたですね」
「そう。うんめいのであいをまってるんだって」
夢見る乙女に運命の出会いをプレゼントしようじゃないか。ちょうどプロポーズしたがってる奴もいることだしね。
「……レンさま、それ悪知恵」
「おだまり」
私への迷惑を回避するためなら手段は選ばないのだ!
子供の悪知恵って怒りにくいよね。