024 負けない挫けない諦めない
父との三者面談が長引いております。
今すぐにも休養が必要だと思われる当主。わかっててどうしようもない(と思われる)執事長。大人の都合は根が深いのかな。
「トゥレン様」
「なんでしょう」
「なぜ、お父上と呼ばないのです?」
あ、ばれたか。
どうも。引き続き三者面談なレンさんです。
私と初対面でなにもかもが初耳なことに半分パニックになってる父。その父のために冷静に説明する義務があるのか、私に詳しく質問する執事長。キレる男は仕事も早い。家の業績この人の手柄なんじゃね? とか下世話な思考だな。
「えーとですね。はじめてあうということと、わたしをべっかんにおいやったということをきいたので、すかれてはいないのだろうむしろむすめとはおもってないんじゃないかとおもったのです」
いや、ふたりしてそんなあからさまなショック受けた顔しなくても。
実際、本館の下働き達の口はよく回るからねぇ。情報には事欠かないのだよ。下世話なのから最新トレンドまでなんでもござれ。世の中は女性の噂話で回ってるのかも。
その噂話から、あの人(私を産んだ人)の話はほぼ拾えた。生い立ちから嫁ぐまでとその後、まぁ昼ドラドロドロ深夜枠までな内容に、中身大人に近い私ですら吐くかと思った。子供には聞かせられない、特に姉さま。倒れちゃうからね!
「そう、ですか。ご存知ですか」
「まぁ、あるていど。なので、ししゃくさまのかんがえがわからないいじょう、ぶなんなうけこたえになりました。わたしはわたしのこんやくがなくなればいいのだし」
「婚約は、お嫌ですか」
「すきじゃないひととのみらいに、なんのきぼうがもてると?」
「「…………」」
この世界に、結婚したい人はいないの。私が一緒にいたいのはすうちゃんだけなの。姉さまもナディアナさんもミーリヤさんも好きだけど、忘れられない忘れたくないすうちゃんだけが、私の生きる意味だった。
生まれ変わったけれど、心は昔のままの私。ならば、選択肢はひとつしかない。告白もできなかったけど、つき合ってたわけでもないけど、好きな人。
負けない挫けない諦めない。
私のためにその言葉を、笑うために愛情をくれた人。だから、私は私を曲げることはできない。
「なので、こんいんでししゃくけにりをもたらすことはできませんので、はたらきたいとおもっています」
よし、とりあえず言いたいことは全部言ったかな。
「あと、そろそろすわりませんか」
「「あ」」
忘れてたんかい!
レン父、ヘタレ疑惑。てか、仕事以外ダメダメっぽいなこの人。