023 ステルスも極めれば役に立つ?
父との面談、長引きそうです
貴族の娘なら、政略結婚なんて当たり前なんだろう。けど、私はまだ彼を忘れることができないでいる。こんな気持ちで相手を探そうなんて、相手に失礼だし私が納得できない。
生やら世とか界を跨いでまでしつこいかもしれないけど、気持ちに嘘をついてもいいことはないし、ストレス溜め込む生活も多分無理。つくづくお貴族さまにはむいてないのだ、私。
おひとりさま上等だ。独身街道ドンとこい! 操でもなんでも立ててやらぁ!
どうも。初恋を終わらせることができないまま、引きずり流されてるレンさんです。
父親と初めての顔合わせは、子供としてではなく、私として臨んだ。さて、私の爆弾発言で固まった大人をどう解凍したものか。
そらそうだよなぁ。3歳児が結婚はしない、働きます宣言なんて普通はしないもの。私普通じゃないのか、うんそうね。
びっくりしたままの(多分血縁有りの)父と、なんか納得しましたな執事長。これ、ずっと執事長が陰から支配……支えてきたんだろうね。わーかほりっくじゃなかったのか、父。いや、それは間違いない。執務室から出てこないらしいし。
なんか、ほぼ執務室で生活してるらしいよ? 自分の部屋もあるのに、執務室の仮眠部屋で寝てるそうだ。おかげで子爵家の業績は右肩上がり、うちの使用人は安定した職でウハウハ。子爵その人の真っ黒な隈さえなければ、私もなにも思わないんだけど。
この人、一体なにから逃げようとしてるの?
「トゥレン様」
「はい」
私の目線に合わせてしゃがんだ執事長は、真っ直ぐに私を見つめてきた。
「どこまでご存知でいらっしゃいますか?」
えーと、割とどこまでも? てか、鋭いな執事長。ステルスな私は、どこに行っても気づかれない。ので、使用人のあれやこれいやんな噂話から、子爵家の昔話まで結構聞くことができてる。情報って大事だよね。
「貴女は、子爵家のご令嬢でございます。働くなどお考えになりませぬよう」
「いまはよくても、いずれそれではよくないひがくるのでは? このままでは、そうそうにししゃくさまはたおれますよね?」
その時、それでも私はきっと家を助けるために嫁ぐことはできない。ならば、別の手段を考えなくては。
そう言う私に、執事長は目を伏せた。
「貴女から見てもそう思われますか」
「ねぶそくか、こころにふたんがあるのか。どちらにしてもげんかいがちかいかと」
今だって、衝撃を受けすぎたのか寝不足なのか、思考がまとまらないみたいだし、まともに立ってられないように見える。
ホントにこの人大丈夫?
レンさん、耳年増疑惑。