016 悪ガキと謝罪。私の自由はどこへ
琥珀くんの性別が決まりました。かいとさんありがとうございます!
琥珀は男の子だったよ。
確認したら、その後しばらく触らせてもらえなかったよ。恥ずかしかったらしい。ごめんよ。
痴女じゃないよ、レンさんだよ。ちなみにまだまだ3歳。先は長いなぁ。
しかし、子供なのに痴女はないだろう、私。
琥珀は姉さま達にも快く迎えられた。基本は私の肩に乗っかってるのでもはや一心同体。子猫なのでもふもふふわふわ軽い。でも見た目は小虎。
トールに引き離されそうになると、みぃと寂しげに鳴くの。さすがにトールも鬼になれないみたい。演技派だな、琥珀。
あの後、悪ガキ共は母親と一緒に謝罪に来たらしい。姉さまと兄の含みだらけの笑顔(お怒りすぎて笑顔に見えるだけ)の前に、ごめんなさいのごの字も言えないで泣いたそうな。
泣いたって、やったことはなくならない。確かに謝ることは大事だ。けど、それは本当に反省した心で謝罪した場合のこと。
彼らのように家のため、とか母に怒られたから、が理由ではまた繰り返すだろうし。少なくとも、私は疎遠でいい。琥珀の傷は治ったけど、されたことは消えないし。
そんなことがあって、姉さまの婚約者候補探しは、カダム・ラルフォーレ伯爵子息だけを残して、親類縁者以外で考えることになったそう。当然だね。
昼間の姉さまを婚約者探しのお茶会にとられたので、私は琥珀と遊ぶことが多くなった。
琥珀は頭が良くて、私の安全確保がとれない場所には行かせてくれないし、大人の目が届かない場所に行こうとしても阻止してくる。保護者が増えた。
今日も今日とて、森の近くで遊んでても小川には近寄らせてくれないし、外壁付近もダメされてしまった。お父さんは過保護です。
「いてっ」
「いて?」
誰かの声がどこからか聞こえた。男の子の声。でもここには私と琥珀だけ。トールは姉さまについてるからいない。てことは誰だ。
外壁の方から聞こえた気がするので、琥珀に止められないギリギリまで近づいてみる。
「あ、いた」
外壁から子供が生えてる。いや、違う。外壁に空いた穴から入り込もうとした子供が引っかかってる。しかもどっかで見た顔だと思ったら、琥珀をいじめてた悪ガキだわ。
「おい、いたいぞ! はやくなんとかしろ!」
元気に叫んでるとこ見ると平気そうだね。あ、目合っちゃった。
「あ」
「なにやってるのさ、こんなとこで」
「う、うるさい! はやくなんとかしろ!」
「なんとかもなにも、うちにかってにはいろうとするばかに、なんでわたしがしてあげなきゃならんのよ」
「ぼくにさからうな! ぼくははくしゃくだぞ!」
「はくしゃくけのこどもだけど、じきはくしゃくじゃないじゃん」
うちに婿入り、もしくはうちの父親の持ってる男爵位を継ぐかって話になるんだから、こいつももれなく次男か三男だろう。どうあがいても伯爵にはなれないよ。
「うるさいうるさい! ぼくはえらいんだ!」
「えらいのはあんたのおやであってあんたじゃないわ! このどあほうが!」
ふざけんじゃないわ、まったく。
レンさん、結構な頻度でお怒りになりますね。前世では喜怒哀楽を表すの苦手だったので、いいことだと思われます。