015 ずっと一緒
暑いような寒いような。皆さま体調に、お気をつけくださいませ。
ゆらゆらと景色が歪む。
見慣れた風景、もう歩くことはない場所。なつかしい我が家。優しい人達。
涙が出そうになるほど、手を伸ばして叫びたくなるほど、還りたい。届くことはない声が虚しく響く。
歪んで当然だ。
あの場所はもう私の記憶の中にしか存在しない。戻ることもできない。帰れても、あそこに私の居場所はない。
できるなら、私のことなど忘れて欲しい。
私は、決して忘れないけれど。
夢から目覚めてごきげんよう。
珍しくシリアスだったレンさんです。
見慣れた部屋は私のもの。ふかふかベッドに埋もれる身体は小さい。うん、間違いなく私だね。……てことは。
「……あのこは!?」
「おちついて、レン」
目覚めた私の第一声は予想通りだった。そして、姉さまは私の上をいく的確さだった。
私の言動を見越して、子猫入りのバスケットを私の枕元に置いてくれてた。さっすがー。いなかったら走り出しそうだしな、私。
子猫は包帯まみれだった。ミイラかよ、と突っ込んでもいいくらいの。
「手当てはしたのだけど、目をさまさないの」
姉さまの言葉に、子猫に手を近づける。息はある。寝てるのは体力温存のためだろう。てことはあとは子猫の生命力しだい。
「ありがとう、ねえさま。このままこねこといてもいい?」
「おいしゃさまがいいといったらね」
倒れたことで心配かけたので、素直に頷く。もちろんダメと言われても看病するがな!
お医者様からの許可をもらって、私は看病し続けた。撫でられる所が頭しかなくて、撫でたり小さな足を握ったりと、頑張れと応援しながら。
二日後。手を握りながら寝落ちした私は、みぃと小さく鳴く声で目を覚ました。
「にゃんこ!?」
「みぃ」
起きてる! あ、目は琥珀色なんだ、私と同じだね。
包帯がほどけてたけど、そこにあった傷は治っていた。……回復早くね?
まぁいいか。元気になったのならそれでいいさね。
「ねぇきみ、うちのこになる?」
「みぃ」
「え、そくとう? もちょっとかんがえてもいいんだよ?」
「みぃ!」
「そか。じゃなまえだね。なんにしよう」
「みぃ」
「じつはもうかんがえてあるんだけど。コハクでどうだろう?」
「みぃ!」
琥珀。私とあなたの目の色。キレイな色。
琥珀が返事をした時、私と琥珀の間が金色に光った。暖かい光だった。一瞬で消えたけど。え、なんかまずいことした?
「みぃ」
ぴょんと琥珀が私の肩に乗った。軽いな、子猫ってこんな軽いの? 重さがないのと変わらないんだけど。
「みぃ!」
え、気にするなって? うん、まぁいいけど。
あれ? なんで言いたいことがわかるんだ? んー??
琥珀ちゃん、性別どっちにしましょう?