014 ちいさな、いのち
お、今回は早い方ですね。頑張ります。
「なにしてやがんだゴラァ!!」
思わず怒鳴りつけたものの、如何せんまだまだ小娘、レンさんです。
甲高い声は結構響いた気がする。ギクッと肩を跳ねさせた子供達が、動きを止めた隙に、その足元に潜り込む。
いたのは、小さな生き物だった。ネコかな、ピンとした耳に、ちょっと長めの毛。白毛にグレーの縞模様はホワイトタイガーを思わせる。足太いし。
でも、今は動かない。ぐったりと横たわる身体は血と土で汚れてる。虐待で受けた傷に違いない。
「……な、なんだよおまえ。はくしゃくけのぼくにさからうのか」
見られて動揺するなら最初からすんなや、ド阿呆が。
「じぶんがなにしたかわからないの? ちいさないきものだからなにしてもいいとでも? そのちいさなものをまもるためのきぞくがなさけないこと」
「なっ、な!?」
反論も満足にできないのか。私は着ていたボレロを脱いで子猫を包んで抱き上げた。早く手当てしなきゃ。
「おい、それをおいていけ!」
「いきものをころすつみをせおえるようになってからいいなさい。トール、ミリーヤにれんら、く!?」
「おれにさしずするな」
「トゥレンさま!?」
危なっ! 歩き始めた私を横から突飛ばした悪ガキは、私から子猫を奪おうとする。転がった私は、子猫に覆い被さってガードすることしかできない。近くで笛の音が鳴り響くけど、どこか遠くからにも聞こえた。
「かえせよ! それはおれのだ!」
「ま、まてよ、それいじょうはあぶな」
「おこられるよ、やめようよ」
私を蹴ってくる悪ガキを止めようとする声がする。地味に痛い、手加減なしの力は暴力と変わらない。八つ当たりとかじゃ済まさないぞ、覚えとけ。
「うるさい! おれははくしゃくけなんだぞ! さからうな!」
「いずれ家を出される三男が随分偉そうだな。うちの妹になにをしている?」
「「「っ!?」」」
バカ兄の声と同時に、暴力は止まった。
「レン!? レンだいじょうぶ!?」
「ね、さま?」
心配そうな姉さまの声と、そっと抱き起こしてくれる腕。意外といいとこあるのね、兄。私と子猫を抱き上げて、悪ガキ達を睨みつける姿は、貴族そのものだ。中身ヘタレだけど。
「この件はしっかりと抗議させてもらう。子供とはいえ、女性に傷をつけたこと、簡単には許されると思うな」
「にどとおあいすることもありませんが、そのみにくいおかおはみたくありませんわ。ごきげんよう」
怒るとそっくりだよなぁ、バカ兄と姉さま。
そんなことを考えなから、私の意識は遠のいた。いやー、気絶って初めて。
ニューフェイスです。詳細はかなりあとの方で語られることになりそうです。なんせレンさん視点ですから。