011 未知なる遭遇?
ご無沙汰しております。言い訳にもならない言い訳は活動報告にて。
その子に会ったのは、初めて姉さまを見つけた林だった。本邸と別宅の間にある、意外と広いあそこね。
目の前で泣きながらなにかを叫ぶ子供。てか、私よりは年上っぽいんだが? なにこのギャン泣き。なにがあった。
どうも。今日もひとりで探検中のレンさん、3歳です。
探検始めてすぐの未知なる遭遇。近い年頃の子と会うの、初めてなんだよね。向こうは気づいてないけど。
見たことないけど、本宅の使用人の誰かの子供かなぁ。質素な服着てるし。ふわふわの栗色の髪に目。叫びすぎて顔は真っ赤だし、喉も辛そうだ。
泣き疲れてへたりと座り込む少年、だよね? 髪短いし。私はリュックから水筒とコップを出して水を注ぐと、少年に差し出した。
「……? な、に」
「のどかわいたでしょ。ん」
さあ、ミリーヤさん特製レモン(もどき)水を飲むといいよ! 美味しいよ?
「……あ」
自分より年下から渡されたせいか、すんなり受け取って飲んだ少年は、なにかに気づいたようにコップを見た。
「ミリーヤのつくってくれたおみず、おいしくない?」
そんな発言は許さないし認めないけどな!
「っ、おまえが母さまのなまえをよぶな!」
「へ? かあさま?」
ミリーヤさんが? え、てことはミリーヤさんの? 子供!? なんてこった! てか、なんでここにいるのさ。うちの領地に父親といたんじゃないのか。
「ミリーヤをミリーヤいがいでよぶのは、ミリーヤがゆるさないよ? ミリーヤはわたしのうばだから」
「おまえ、が?」
そう。だから、そのお前呼ばわりは大問題だぞ? そもそも、この高そうなヒラヒラふわふわのワンピース着てる時点で気づいてもらいたい。似合うかどうかは別問題だ。
「おまえのせいで!」
激高って感じに、瞬間沸騰した少年は、私に怒鳴りつけてきた。幼女に怒鳴る少年。うーん、微妙。
「おまえがいたから母さまはぼくたちとかえれなくなったんだ!」
「ああ、そういうこと」
探検で本宅の使用人が話してるの、盗み聞きしたことあるんだよね。ミリーヤさんが私の乳母になった経緯。
もともと、本宅の侍女だったミリーヤさんは、従僕の男性と結婚後、子供が産まれたのを機に領地に配置転換されるはずだったらしい。
子供の乳離れを待って旅立つ予定だったのが、中々子供の体調が安定しなくて、そうこうしてるうちに奥方が私を早産。そして育児放棄。
当然乳母の選定が間に合わない。見かねた侍女長から白羽の矢をぶっ刺されたのがミリーヤさん。自分も大変だったろうに、赤子が心配だからと快諾。ミリーヤさんいい人。
なので、ミリーヤさんの子供は父親と領地に。うん、そら憎たらしいわな。
「でも、それはミリーヤにいったらだめよ? ミリーヤはおしごとでここにいるの。せきにんをもってがんばってるのよ」
「でもおまえのせいで!」
「そうよ。でもミリーヤはそんなことおもってない。ミリーヤからのあいじょうをうたがうなんてしない。それが、あなたのかわりにだなんてもおもわない。ミリーヤがあなたのことをあいしてるのにかわりはない。はなれててもあたりまえのことでしょ」
ミリーヤが毎日手紙を書いてるのを知ってる。優しい顔で微笑みすら浮かべて。手紙の向こうの相手に対する愛情を疑う余地なんてない。
もちろん、私にも愛情を持って接してくれてるのもわかってる。じゃなきゃ母親のように慕うなんてできない。
「……母さまは」
「ミリーヤにはないしょにしておくわ。おこられたくないでしょ」
「……」
頭は悪くないようね。ただの八つ当たり、か。
「ところで、りょうちにいるんじゃなかったの?」
「……ここのおじょうさまの、じゅうぼくみならいになるんだ。もうすぐ、ひるのしゃこうかいにでるからって」
おおう、姉さまの従僕見習いか。長いつき合いになりそうだなぁ。
新な登場人物です。名前はまだない。おい。考えます(笑)