勇者くんの不憫なリアル いち
お久しぶりです。リクエストがあった勇者くんと魔王さまのその後です。
真っ白い光が消えたら、見慣れた自室だった。
「……マジか」
マジです。すぅちゃんが拒否ったせいで異世界に召喚された勇者くんは、無駄に不便な旅をして、カッコつけて魔王と対決したまではよかったのにね、状態で日本に帰還してしまったのでした、完。
「いやいやいやいや! 完、じゃねぇよ! これからだったじゃん! 魔王倒してご褒美ハーレムどこ行った!?」
そんなん初めからないわむしろ騙したお嬢さん方に謝れ男のクズがドン引きだわ。そんな他力本願ハーレム目当てだから弱っちいまま倒せなくて魔力利用されちゃったんじゃないの?
「弱いってんなわけないじゃんオレ勇者よ!?」
勇者だって鍛錬しないと使えないと思うの。チートで最強なんてただの夢よ夢。
「んなまさか、てか誰だよお前」
「さっきからひとりで喋ってるお前の方が変だぞ?」
「は?」
そう、勇者くんの部屋にはもうひとりいた。
ダークグレーの髪と瞳をした、外国人みたいなイケおじさんが、異世界産のコスプレ衣装で胡座をかいてたのさ。
「なにこのムダにイケおじな魔王、なんでここにいんの!?」
よく回る口だね勇者くん。
「そりゃ、お前の魔力と俺のを使って転移したからだな」
あっさりと宣うこのイケおじさん、正真正銘の魔王さまである。まぁ、向こうでは前魔王さまなんだけども。ちなみにイケおじさんは超エロボイス。
「いやー、魔王なのはいいが、暇でなぁ。覗いたお前の記憶がやたら楽しそうだったんで、来てみた」
「さらっと言うなぁ!!」
「事実しか言っとらん」
「なお悪い!!」
レンさんの推測はほぼ正しかったことが証明されたね、今更だけど。
「なにこの悪びれないおっさん! オレの異世界ヒャッハーチートでハーレム潰しといてなんなの悪夢か!! しかも無一文な国籍住所不定なイケおじの面倒見ろとか神はいない!!」
ベッドに突っ伏してさめざめと泣いてみても、現実はかわらない。しかし、面倒見るとか自分で言うあたり、悪徳商法に引っかかりそうなおバカさんの可能性あるかもね。
「優しいと言って!」
嫌だわーそんなん言われて嬉しいの?
「せめて女ならともかくイケおじとかなんの悪夢か!!」
「女ならいいのか?」
すっかり全て丸っと面倒見てもらうつもりの魔王さま、んー、とぶつぶつ言ってたと思ったら、ニッコリ笑ってサムズアップなさったよ。なにこれ悪巧み?
「よし、できるぞ。この世界に魔力はあっても無駄みたいだし、長生きすると目立つしな。パーッと使いきろう」
は? と勇者くんが振り向いた時には、そこにイケおじさんの姿はなく。
「は? え? は、はあぁぁぁぁ!?」
「今日から世話になるぞ」
ダークグレーの髪をゴージャスな巻き毛に伸ばし、丸みを帯びたボンキュッボンなナイスバディをコスプレ衣装から覗かせた、超美人な魔王さまがおられたのでした。
なんというお約束(笑)