笑顔のレンを守るのはボクと…… に
お待たせしました。申し訳ありません。
「精神的のと物理的もしくはモゲロの呪い、どれがいい? ああ、全部?」
意訳
二度と手を出そうと思わないように、精神的打撃で再起不能と肉体的一点特化型攻撃、どれがいい?
どれもそこそこヤバいんじゃないかなぁ? あと、すぅの本気と書いてマジな顔もヤバいと思う。レンには絶対見せないから許すけど。
多分、レンなら「そんなすぅちゃんもステキ」とか言うと思う。多分、きっと?
今のレンはすぅに再会? した驚きと嬉しさで舞い上がったり、帰れる方法がないのに、自分を探しに来たすぅを心配したりと中々に複雑な気持ちを行ったり来たりしてるよ。
でも、少ししか一緒にいないけど、すぅはレンがいれば幸せなんじゃないかなぁ? きっとすぅの両親はそれをわかってるから、心配はしても悲しんだりはしてないと思う。
レンも落ちついたら気づくと思うよ。あんなに穏やかに笑うすぅを初めて見たって、おねーさんふたりが言ってたしさ。
レンにくっついて離れないすぅの執着具合を見れば、帰れないことなんて些細な事だと思うよ?
さて、アホアホな国王の命令書をテーブルの上にポイした面々は、自分達含むレン達のその後の話し合いに夢中だ。
見切りをつけると後は早いよね。
宰相夫妻と騎士団長夫妻は後任に引き継いだ後、国を出る一択。今の地位とかに未練は一切ないらしい。ほんと潔い人達だ。
「あと、物理的攻撃はもうしばらく待って欲しい」
「いくら阿呆の愚王でも、跡継ぎの王子がひとりではちょっとねー」
「え、子供いたんですか?」
「ハリェス嬢、興味なかったものね。一応ひとり側室腹の王子がいるわ。王妃予定の彼女の子が男なら、迷う必要はないと思うのだけど」
「産まれはともかく育ちがアレでは後継には向くまいがな」
確かに! と全員が頷くあたり、育ち方がアレなんだろうか。そういえば、魔王さまが白竜のおねーさんを拾った時もこの国だったっけ。センスの欠片もない衣装を作らされて、お針子さん可哀想って言ってたね。
そうかー、あのセンスは遺伝するのかー。しなくてもいいものだけが残るのはお約束なのかな。
「子供が子供を産むのだから、ひとりでは育てられまい。ましてや、王族の子なら尚のこと。教育係は優秀な者を選んでおこう」
宰相さんは引き継ぎすることを書き出しては、追加追加追加と足し続けてる、紙足りないね。
でも、完璧に引き継いだのなら、なぜボクの知ってる未来の次期国王はあんな現国王のコピーなんだろう。
「引き継ぐ予定の者は、野心だけは人一倍の無能だから、やらかしてしまいそうね」
あ、なるほどだからかー。宰相さんの奥さん的確だね、わかりやすいよ。
「俺はこの国に興味はないから、ひなと琥珀はどうしたい?」
すぅのひな優先は変わらない。なら、ボクの答えも決まってる。
「レンのしたいことはなに?」
「え、私?」
うーん、とレンは悩んで。そしてーー。
まぁ、即国外逃亡したよね! 迷いなんてないよね!
あちこちの国を冒険者として旅をしたボク達が、ボクの故郷である魔王領に落ちつくのは、まだ先のこと。
同じく元宰相さん達が魔王城に就職するのも先の話。
魔王サマとレンの気が合って仲良くなって、すぅが嫉妬するのも先の……いや、今も変わらないかな。
レンの子供達の子守りとしてボクが活躍するのは、そう遠くない未来のこと。
福利厚生とかなんだかんだ1番なのが魔王城という(笑)