笑顔のレンを守るのはボクと…… いち
その後は琥珀が最初と決めてました。
ボクは琥珀。魔虎で、レンの契約獣だよ。
元々、レンが召喚されたこの世界にいたんだけど、世界の穴(としか説明がつかないんだよね)に落ちたと思ったら、レンの世界にいたんだ。
もう参ったよ。魔素がない世界だったから、元の大きさの身体を保てないし、弱ってく一方だったし。
隠れてたボクを見つけた子供達にイジメられても、反撃する元気も無いしさ。
レンが助けてくれなかったら、どうなってたかわからないね。そして、レンの中に魔素があったおかげで、ボクは生き残れたんだ。名前をもらって契約できたからレンの魔素もらい放題になったし、命の恩人だよね!
だから、この世界に召喚された時、今度はボクがレンを守る番だと思ったんだ。知らない場所って不安だからね。
そうやって、この世界に馴染んでも、レンはずっと誰かを想い続けてたよ。聞いたら「すぅちゃんはたったひとりの、ずっと好きな人」なんだって。ボク達への家族愛とは違うんだって。
だから、婚約も結婚もしたくないんだって。番に一途なのはいい事だけど、逢えないのにな、とその時は思ってた。
あのパーティーが始まるまでは。
レンの心が衝撃を受けた時、でも嬉しさの方だなと見守ることにした。
認識阻害をかけたボクはレンの肩にいたけど、誰にも気づかれてなかったし眺めがよかったからそのままでいることにした。
パーティードレスのレンは誰よりもキレイで可愛かったよ!
そのレンの想い人は、異世界から来た勇者だった。この世界に召喚された頃、レンの前世の話は聞いてたから、ああ、あの人がって思った。
レンの心がパニックしてるのが、繋がってるボクにもわかったよ。珍しいことだったしね。
てか、こっちを見たんだよね、あの人。魔力強いし量もありそうだし、確かに魔王さまレベルだったよ。
パーティーホールのど真ん中でのプロポーズは、中々に衝撃だったみたいだね、みんな。色々な思惑を持ってた腹黒やら獲物を狙うハンターな女の人とか、まとめて叩き潰す感じ。
流れるようなマーキングと威嚇に、レンを守るためなら殺りかねないなとの第一印象は間違ってなかったと思ったよ。
面倒くさいことになる前に場所を変えようとなった時、軽々とレンをお姫さま抱っこしてたし、牽制も忘れないし。
「ひょわっ、すぅちゃん!?」
「ん? どうかした?」
「イエナンデモアリマセン」
でもなんでレンがひなだってわかったんだろう。レンもそこは不思議だったのか問いかけてたよ。
「わかるよ、どんな姿でも。ひなはひなだから」
あらあらまぁまぁ、とおねーさんふたりが赤面するくらいサラッと答えが帰ってきたよ。レンは全身真っ赤だったね。
まぁ、実際は前世と顔は似てたし、手紙にひなしかわからない言葉が書いてあったとこからの推測もあったみたいだけど。
「ひな……今はハリェスと言うの?」
「あー、苗字なの。真名は知られたらヤバいかなって」
「確かにね。で、肩にいる彼を紹介してほしいんだけど」
別室に移った後、ふわりとソファーに降ろされたレンは、ようやく落ちついてきたみたいだ。
「え? あ、あのね琥珀はね、私の家族で友達で師匠でね。琥珀がいたからひとりじゃなくて、家族が遠くても……ほんとに、琥珀がいてくれたから」
元の世界の家族を思い出したんだろうね。いつもは思い出さないようにしてたみたいだから。
ふられたボクは認識阻害を解いて姿を現した。
「初めまして。ボクは琥珀。レンの契約獣だよ」
「初めまして。琥珀殿、とお呼びしても?」
「レンの旦那さんなら琥珀でいいよー」
「では、琥珀。俺は朱桜。すぅとでも呼んでくれ。今までひなを守ってくれてありがとう。これからはオレも一緒に守らせてくれないか」
「もちろん、よろしくね」
手と肉球でハイタッチして挨拶。うんうん、ちゃんとわかってる人がレンの番でよかったよ。
宰相達の挨拶も済んで(レンのドレスはやっぱりひなの憧れドレスだったそう)皆がそれぞれソファーに座った。
「で、これからなんだけど」
朱桜が言ったライフプランは3つ。
いち。 このままここで暮らす。すぅも働く。
に。 この国を出て他の国に移住。
さん。 この国を出て冒険者として旅に出る。
「正直、いち。はおすすめしない。あの国王、ひなのこと見てたし」
「え? 真っピンクにデレデレだったよ?」
「いや、ひなを見てた」
それを裏付けるかのように、宰相にレンを差し出すよう国王から指示を側近がもってきたよ。
あの女好き、真っピンク含む側室達だけじゃ足りないの?
長いのに続くって(笑)