最終話 幸せになろうね!
本編完です! ありがとうございます!
心臓がばっくばっくうるさくて壊れそう。
なにこれ挨拶するだけなのに緊張しすぎて死ぬかもいやすぅちゃんに挨拶もせずには死ねないけども!
表面上優雅さを保てたのは、姉さまの教育の賜物だったよ。ありがとう、姉さま!
「勇者殿、こちらは私の部下で報告書を訳してくれたハリェス嬢だ」
「ごきげんよう、ハリェスと申します」
宰相閣下から紹介されて、国王陛下にしたものより綺麗なカーテシーで挨拶する。でも緊張でこれ以上話せない。情けないけど、話したら泣く自信しかない。
「……ひな」
懐かしい声が、懐かしい名前を呼んだ。私のであり、違う名前。
すぅちゃんは私を見ていた。真っ直ぐ、疑いのない目で。
いやいやいや、そんなわけないでしょ偶然でしょ。そう思っても、周りの困惑を気にもせず、すぅちゃんは繰り返した。
「ひな」
夢見てるのか幻か。すぅちゃんは私を見たままだ。本人は嫌がってたけど、しぃパパ似のその瞳見たら。……滅多に見せない微笑みなんて卑怯な。ずるい。
「逢いたかったよ、ひな」
ダメだ。涙腺が壊れた。涙が溢れて前が見えない。人前で泣くなんて、淑女の行いではないのに。
嬉しい。ただ嬉しいの。すぅちゃんが私に気づいてくれた。私にまた話しかけてくれた。逢いたかったって、その言葉がどれだけ私の心を揺さぶるのか、貴方は知らないでしょう。
「ひな」
声が近くなったと思ったら、誰かに抱きしめられた。誰かってすぅちゃんだろうけど。
「すぅちゃ、わ」
「逢いたかった、逢いたかったんだよ。ひな。ひな、をどんだけ探したとっ……!」
もう消えないで。とぎゅう、と抱きしめる力が強まって、震えるその身体に気づいた。
「ごめん、悲しませたね。突然でごめんね? もう消えないよ、ずっと一緒だよ。あ、なつるは無事だった?」
背中に腕を回して、ぽんぽんと叩く。
泣きそうな背中は、けれど泣いてはいない。男の子だもんね。18歳はこっちでは大人扱いだけど。
「本当に、本当に消えない? ずっと一緒にいてくれる?」
「ん? うん、ずっと一緒だよ」
ぴか、と小さな光が弾けた。あれ、言質取られた? いや別にいいけど。
「じゃあ、ずっと一緒にいてね」
にっこりと笑ったすぅちゃんは、そのイケメンスマイルで女性達をノックアウトしたけど、ガン無視で跪いた。
私の左手を取ると、薬指にするりと冷たい感触。指輪?
「城田ひなさん。俺と結婚してください」
見上げる視線と蒼い宝石が嵌った指輪。憧れのドレスに夢見たプロポーズのシチュエーション。
ああ、すぅちゃんには敵わない。
「はい、喜んで!」
一緒に幸せになろうね!
お疲れ様でした。あと何話かその後を書いて終わる予定です。




