カウントダウン いち
カウントダウンです。
その日は、朝から戦争のようだった。
トゥレンとしてはさんざん経験した、ハリェスとしては初めての。パーティー参加のためのドレスアップ。
どうも。どうにも蚊帳の外感が抜けないまま、舞台のど真ん中に立たされそうな予感なレンさん、多分17歳になりました。
朝からお風呂で全身磨かれて、マッサージに爪のケア。髪型を決めたら飾りとのバランスをとってメイク。あーでもないこーでもない、こっちがいいかそっちがいいか。
お風呂入ってヘアメイクしてドレス着たら終了なのに、そこまでが長い。
ドレスを見てない私は、髪飾りとかのバランスの話に入れない。てかなんで着る本人が見れないのか。
久しぶりのフルメイクも慣れないし、頭重いしお腹すいたし眠いし。
軽食とってる時、廊下もバタバタしてたけど、王宮でドレスアップしてるの私くらいだったんだよね。ご令嬢は完璧に装って王宮に来るし、後宮の方々は後宮で大騒ぎしてるもの。
ようやく髪飾りが決まった辺りで、到着して優雅にお茶を飲んでた宰相夫人が口を挟んで、位置がどうの向きがこうのって、はぁ。
さらに騎士団長夫人がメイクにダメ出しして、またやり直しって、はぁ。
時間が更にかかって、私は疲労困憊なのに、ご夫人方はまだまだ元気って。なんだろ、場馴れの差なのか。
ドレスの着付けでコルセット締められたけど、魔法でキツくならないようにしといた。魔法最高。コルセット、あとで改良しようそうしよう。
ドレスは白。オフショルダーで、胸元はレースが首まで。ネックレスがブルー系なのでワンポイント的アクセントが映える。
スカート部分はほぼレース。ふんだんにあしらわれてるので、トレーンが長くても重くは感じないし、むしろ歩くたびにふわりと浮く感じがかわいい。
「……あの、ご夫人方。このドレス、は」
「あらー、よく似合ってるわー」
「本当に、よく似合っているわ」
「いえ、あの」
わかっててやってますね? 聞きたいのはそんな言葉じゃないんですよ。
なんでこのデザインのドレスがここにあるかって話なんですけどね!?
これ、このドレス。昔、前世の私がステキ! ってずっととってた雑誌の切り抜きに写ってたのにそっくりなんだけど!
細かい所は違うけど、むしろこのドレスの方が宝石とか刺繍とかの分グレード高いけど!
いや違う、そうじゃない。そうだけどそうじゃないんだよ。支離滅裂だけどそうなんだよ。
私がこのドレスに憧れてたことを知ってるのは、知ってたのは、ひとりだけなんだよ。
ねぇ、貴方はここにいるの?
すぅちゃん。
ようやくきたか……! です。