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7 助けた責任

人の性格、つまり、人格は環境に依存する。

ぬるま湯のような環境で育った俺は、無気力だった。

突然、刺激を与えられ、不相応な力を持った俺は無責任な責任感に満ちた男になった。

そのせいで、責任の取りようがない最悪な事態を引き起こした俺は酷く情けない気持ちとやり場のない怒りを抱えた不安定な男になった。

三日三晩、首だけで叫び続けた。


死んでしまえば、もしかしたら出来事を忘れ、周りの環境に適応し、また無気力に生きられたのかもしれない。

彼女たちのどちらかが生きていれば、気力が戻ったかもしれない。


しかし、俺にそんなことは許されなかった。

ホムンクルス……世界最高峰の魔法学の粋を集めて作られた俺の体は、再生を始めた。


体が再び作られ、腕が伸び、足が生え、元通りの体に戻っていった。

彼女たちは戻ってくれないのに、俺は戻ったのだ。


そもそも、おれはなぜ、彼女たちを連れだしたのだろう。


この世界のことを全く知らないおれが、どうして彼女たちを守れると思ったのだろう。


「おれは‥‥‥‥‥無力だ…‥‥」


叫び続けて掠れてしまった喉は、殆ど言葉を発することができていなかった。

目から涙がこぼれる。

言いようのないくやしさ。

彼女たちの顔が離れない。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


目に指をさしかき混ぜる。


痛い‥‥‥、どこかで掠れた叫び声が聞こえる気がする。


「お前みたいな化け物さえ、現れなければ・・・・・、私も、マイオも・・・・・殺されなんかしなかったのに!!」


俺のせいにするなぁああああああああああああああああああああああああああああああ


いくら叫んでもかすれた声は頭の中を反芻するその言葉を消し去ることはなかった。


「ききたくないんだよ!!!!!!!!」


耳を引きちぎる。


幾分ましになった気がしたのは一瞬だった。


永遠に続く彼女の顔と声の反芻と、自傷は辞め時がわからずに続いた。


痛みに耐えられず、気絶を繰り返すその日々が一か月ほど続いたときだろうか…‥‥、


一人の女戦士が現れたのは。


「なんだ、この穴は。前に来たときはこんなものはなかったはずだがな・・・・・・・・、ん?そこに倒れているのはもしや人か・・・・・?」


女が俺の頬を叩く。


「おい、しっかりしろよ!!おい!!」


女戦士はおれが生きていることに気が付くと、俺を担ぎ上げて穴を登り始めた。


「ほっといて・・・くれ」


掠れた声で答えるが、聞こえなかったようで女戦士は歩き続けるのだった。


数時間が経って、俺は謎の荷台に女戦士と共に載せられた。


「その男はどうしたんだぃ?」


「拾った。遭難者かもしれん。連れ帰る」


「そうか・・・・・、まぁ、金貰えるなら、文句言わねぇけどな。じゃあ、行くぜ」


サスペンスのない馬車に気持ちが悪くなる。


「なんだ、お前酔ったのか。だらしがないやつだな。ほら」


女戦士が背中をさすってくれた。


更に数時間が経って、来たことのない街に到着した。


「ここは、民間の戦士がギルドを仲介して依頼を受けるために集まる街でバリスタっていうんだよ。見覚えあるか?」


俺は静かに首を振る。


「そうか。まぁ、お前の迷子届は出しておくよ」


女戦士が険しい顔で頭をかく。


「しかし、面倒なことになったな。個々の町の住人じゃないってことは家も金もないんだろ?」


女戦士がしばらくこちらを見つめる。


「…‥‥しゃーねぇ。俺の家にこいよ?」


「俺が・・・・・・?」


「しゃべれんのか。てっきりしゃべれねぇ奴だと思ったぜ。私はモネ、よろしくな」


「…‥‥」


「なんだよ、お前は?名前!」


「・・・・・エイト・・・・黒金永人だ」


「クロガネ・・・クロか。よろしくな」


「‥‥‥」


「ったく、なんだよ。愛想のないやつだな」


「…おれのことは構わないでくれ、助けられるに値しない」


「それはおれが決めることだ。それに、助けちまったからには責任があるからな」


酷く衝撃的な一言だった。


「お前・・・・泣いてんのか?」


「・・・・ぁあああああああああああああああああああああああ」


「ど、どうした!!」


意識が遠のいていく。


「お前みたいな化け物さえ、現れなければ・・・・・、私も、マイオも・・・・・殺されなんかしなかったのに!!」


彼女の声が再び頭を反芻した

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