4 静かな夜
悪魔の黒翼を利用し、旋回しつつ森に静かに着地した。
「君たちは魔族・・・だよね?」
おじいちゃんの説明だと、魔族とはエルフ、獣人、吸血鬼の主に3種類だという。
彼女たちはどう見てもエルフだ。
「はい。助けていただき、ありがとうございます。魔王様・・・・、でよろしかったですか」
「ああ。魔王ってことらしい」
俺は、今までの事情を彼女たちに話した。
「なるほど、そういうことでしたか。申し遅れましたが、私の名はミラ こっちは妹の」
「まいおだよ」
幼女は妹だったか。ってことは、姉妹で逃げてきたということだな。
「そうか、俺は黒金永人。エイトとよんでくれ」
「エイト様。宜しくお願い致します」
「よろしくなの!」
「ああ。よろしく。さて・・・・、あの町にはお前ら以外の奴隷はいないのか?」
「ええ。魔族の奴隷はすべてリオネス・・・・、つまり、人間の最も大きな国に集められましたが、その後各町の長に分配されました。町には二人で連れてこられたので、ほかにはいないかと思います」
「そうか・・・・、よし。なら、次の町に向かうとしようか」
町・・・・・・、だけど、この国の町がどこにあるかなんて全く分からないしなぁ
「次・・・、でしたら、この森の、先ほどの町と反対側に抜けたところにある町、フ―トがよろしいかと思います。魔族が4人ほど送られたと聞いています」
「よし、なら、明日の朝にでも向かうとしよう。今日はゆっくりやすめ」
「わかりました」
「わかったの!」
きゅ~~~~~~
何処からかわいい音が真っ暗な森に響き渡る。
「なんの・・・・」
「ど、動物の鳴き声では・・・・」
きゅっ、きゅ~~~~~~
「・・・・なぁ、腹減ってんじゃないか?」
「いえ、そんなことはありまっ」
きゅ~~~~~~
意固地に否定する彼女を気遣い、如何にか違うやり方で食べ物を渡そうと考えたその時だった。
「おねえちゃん、おなかなってるよ?」
子供ならではの無慈悲な一言が彼女に突き刺さる。
「くっ・・・・、別におなかが減っているわけではないのです。しかし・・・・」
「おねえちゃん、食べ物全部わたしにくれたの!だから、おなかへっているの!!」
なるほど、そういうことだったのか。
このホムンクルスの体は空腹は感じないものの、エネルギーとして食べ物が必要らしいし、ここで食事にしておくのもいいだろう。
「召喚 我に従え、ドラリア!!」
全身を緑のオーラが包む。
「果物なら、なんでも出せるが・・・・、苦手なものはあるか?」
「い、いえ、ありません」
「なら、リンゴにしておくか」
頭の中でイメージすると、目の前の地面が隆起して中から小さな芽が生える。
その芽は一瞬にして大きな大木に成長し、大きな紅いリンゴをたくさん実らせた。
そのうちの一つを取り、一口齧ってみる。
「うん、うまいな。俺の食ったことのある植物なら大体再現できるみたいだ。ミラ、マイオ、好きなだけ食べてくれ」
「で、では、いただきます」
「いただきます!!」
カリッと、リンゴを齧るいい音が鳴る。
「甘い!!!!」
「あまいの!!!!」
目を輝かせてリンゴをほおばる二人。
「好きなだけ食べてくれ。俺は、少し寝ることにする」
「はっ、つい夢中に。今日はありがとうございました!」
「あまあまなの~~~!!ありがとうなの!!!!」
「よかったよ。じゃあ、おやすみ!」
とても静かで穏やかな夜だった。