3 初めての町
暫く飛んでいると、真っ暗な海のような森に浮かぶような明るい光を放っている空間を見つけた。
どうやら、あそこが人間の町のようだ。
とても大きな城壁に囲まれている。
近くで、降りると色々と面倒なので、少し離れたところに降りることにした。
「さて・・・・と、次は町に入らなきゃな」
門番が大きな門の前に立っていて、入ることはできなさそうだ。
「なら・・・、どっかの壁を登るしかない・・・か」
門番から見えず、先ほど上空を飛んだ時に、あまり明るくなかった場所にある壁に移動する。
「我が意に従え、ドラリア」
霧が体を包み、俺の体は緑のオーラを放ち始めた。
「悪魔の蔦」
にょきにょきと地面から不気味な色をした蔦が伸びて、あっという間に城壁のてっぺんまで達した。
悪魔の蔦は少量の養分で以上に繁殖してしまう植物だ。
ドラリアは珍しい植物を含め、沢山の植物を自由自在に生み出し、育て、腐食させることができる。
蔦を伝って、城壁を登った後は、ばれないように蔦を腐食させて消しておく。
中に入ると、そこは住宅街のようだった。ばれないようにコルクの黒翼をつかって静かに着地し、町の栄えている方に向かった。
町は明るいオレンジの光に包まれ、全体的にとても綺麗だった。
住宅は石で作られているようだ。
「さて、この街に魔人はいるのかな」
「ん?あんたも魔人を見に来たのか?」
見知らぬ男が俺に話しかけてきた。
「ああ、いるのか?」
「いるとも。そこにある大きな建物を右に曲がって、しばらく歩くと冒険者ギルドがあるだろ?その近くに領主が遠征から帰ってきた勇者をねぎらうために宴会をやっている場所があってな。そこの見世物として魔人が出るって話だ。なんでも、めっちゃ胸がある女エルフだってよ!!」
「見世物・・・・か。感謝する」
「おお、気にすんなって」
男が笑いながら去っていく。
しかし、勇者がすでにいるとは・・・、たしかじいちゃんは勇者から遠いところにある森に転移したといっていたのに・・・。
だが、あれだけ強ければ問題ない・・・だろう。
今夜、俺はエルフたちを助けることに決めた。
夜になり、町が静かになったころ、俺は動き始めた。
まず、男に教えられた道を通り、屋敷に向かうと、鎖に繋がれた耳の長い美人が二人座っていた。
「あれが、エルフ・・・・・か」
彼女たちの周りには屈強な男が立っている。
「だけど、今の俺なら問題ないだろう・・・な」
エルフを助けたら、とりあえず森に向かうことに決め、俺はエルフに向かって走り出した。
「何者だ!!!」
男二人が剣を抜き、俺を切ろうとする。
しかし、
「わが意に従え、ドラリア!! 悪魔の蔦!」
男達は俺に近づこうとしたが、蔦に縛られ、身動きが取れなくなった。
「我が意に従え、コルク! 魔剣:首切り」
魔剣を呼び出し、彼女たちをとらえている鎖を切る。
「あなたは一体・・・・・」
「魔王の孫。現魔王の永人だ」
「エイト・・・・・・」
「まおうさまの、まご?」
エルフの姉妹は此方を虚ろな目で見つめている。
「とにかく、今は時間がない。あとで話そう」
俺はコルクの黒翼を呼び出し、彼女たちをつかんで飛んだ。
「きゃっ」
「すごーい・・・・、飛んでる」
俺は森に向かって旋回した。