high-five35ex.《晴貴のリボン》
《high-five01関連》
関東地域リーグ・伊立北部シュトゥルム(Sturm)の独身寮。
成沢遥香と相賀晴貴の中学卒業を祝って、
西中郷素衣、高萩直を筆頭に、ママ軍団が集結した。
食堂では特製「焼肉どんぶり」がふるまわれる。
遥香と晴貴が挨拶。
二人とも伊立第一高等学校へ合格していた。
ママ軍団からは入学祝いにブレザー一式がプレゼントされる。
先日、遥美ママに連れられて、あつらえてきた紺の上着にはそれぞれ、
Vチャレンジリーグ男子Ⅰ・伊立コンクレントのエンブレム、
Vプレミアリーグ女子・伊立シェーンハイトのエンブレムが付いている。
ブルーとピンク、ライン入り白のニットベスト。
グレーを基調にしたチェックのスラックスとプリーツスカート。
そして、エンジのリボン。
早速着替えてお披露目するように促される。
遥香と晴貴は特に気にする事もなく、同じ部屋で着替えた。
自然に競い合いになるが、遥香は晴貴の邪魔をする。
置いてあるスラックスのベルトをポイッと遠くに放り投げる。
「やめろよ!」
晴貴が戻ってくると、ブルーラインの入ったベストをまた放り投げる。
「やめろよ!」
晴貴が戻ってくると今度はリボンを放り投げる。
「……」
「『やめろよ』って言えよ!」
「俺もリボンなのか?」
「当たり前じゃない!」
首を傾げながら拾い上げる晴貴。
その間に遥香がブレザーを羽織る。
「私の勝ちだ!」
「へいへい」
「ほら、後ろ向け、付けてやる」
「俺もリボンなのか?」
「ブレザーなら当然だろう!」
「そうかな~」
納得がいかない晴貴からリボンを取り上げ、
遥香が後ろに回り込む。
二人の背の高さはほとんど変わらない。
食堂に戻るとお披露目の記念撮影。
集合写真から、全員と一通りの個別撮影。
晴貴にはみんなのニヤニヤ笑いが気になる。
「晴貴可愛いな~」
西中郷が晴貴にべったり。
「そろそろ良いんじゃない?」
高萩が種明かしを提案。
「ごめんね、晴貴」
遥美ママが晴貴のブレザーのポケットから、
エンジのネクタイを取り出す。
「やっぱりか!」
ママ軍団は笑い転げる。
「結んでやるよ!」
遥香が殊勝に言い出す。
しかし、滅茶苦茶、蝶結び。
それを見てママ軍団はまた爆笑。
「媛貴も、媛貴も!」
妹もネクタイを結びたがったができるはずがない。
西中郷と高萩もチャレンジするが上手く結べない。
晴貴はもうされるがまま、諦めの境地。
「二人ともダメね~」
笑顔で遥美ママが結び直す。
ホッとする晴貴。
「それじゃ、集合写真からやり直しね」
「またやるのか……」
「嫌ならいいけど。
晴貴のリボン姿だけが記録に残って、
みんなのブログで拡散されるわよ」
「そ、それは困る」
ママ軍団も仕切り直しが楽しそう。
弟の結貴が貴美ママの遺影とアルバムを持ってきた。
アルバムの中には学生時代、制服リボン姿の貴美ママ。
遺影を中心に全員が集まる。
貴美ママと同じように、みんなが笑っている。