high-five33ex.《エキシビションマッチ》
《high-five26関連》
第96回全国高等学校サッカー選手権大会、
バラキ県大会の結果が出て、
47都道府県の代表校が決まった。
「伊立第一負けました……、
いえ、出場権を逃しました」
プロデューサーの麻生が報告する。
「分かっている……」
高校サッカー選手権大会を共同製作し、放送する、
民間放送連盟の責任者、宗高は何か考え込んでいる。
「二刀流は目玉の一つになるかと思ったのに、残念ですね」
「そうでもないさ……、プランAがダメならプランBだ」
「ああ、そういう事ですか、三刀流作戦ですね」
「サッカー協会の審判部は、元々そうしたがっていた」
「むしろ、認知度が上がったと考えるべきですね」
「そういうことだ」
「失礼します」
ディレクターの江本がやってきた。
「相賀晴貴の件ですが、
BKBとは何度か接触の機会はありましたが、
交際の線はナシですね」
「だろうな」
「どうしましょう、煙を立てるのは簡単ですが……」
「止めておけ、ウチが火元になる必要はない」
「では、この線は成り行き次第という事に……」
「どうした?」
報告が済んだのに江本Dが引き上げようとしない。
宗高は訝しがる、何かあるな。
「吉備県大会の結果はご存知ですね」
「ああ、確か吉備県大会も決勝戦は引き分けだったはず」
「吉備師恩学園がPK戦で代表を逃しました」
「何か面白いサイドストーリーでも?」
麻生Pも嗅覚が鋭い。
江本Dはニヤリ。
「優勝したのにもかかわらず、全国大会に出られない、
吉備師恩と伊立第一が繋がっています」
宗高も麻生Pも興味を引かれた。
「まず吉備師恩の監督・高鈴剣次は、
前伊立ゾンネンプリンツユースのコーチ。
ジュニアユースで相賀晴貴を育てたのが彼です」
麻生Pがメモを取り始める。
「吉備師恩は春・夏に遠征で伊立を訪れています」
「選手同士も顔見知り、という事だな」
「はい。これはご存知かもしれませんが、
吉備師恩の女子マネージャーは、
三人とも審判員の資格を持っています。
おまけになでしこリーグの、
摂津ドーナッツでユース登録」
「資料にあったな、その中に監督の娘もいたはずだ」
「その通りです。
相賀の受講した、かうべ市のユース2級研修会で、
一緒に審判員チームも組んでいます。
しかもその時には高鈴の家に居候しています」
宗高の片眉が跳ね上がる。
「ドーナッツの関係者によれば、
高鈴の娘、めぐみは将来有望なプレーヤー、
相賀とは兄妹みたいな関係とか、
しかも、そっくりなフェイントを得意としています」
江本Dは要点をまとめにかかる。
「荒れた吉備師恩をまとめた女子マネージャー。
将来有望な監督の娘が兄とも慕う、
サッカー、審判員、バレーボールの三刀流で、
同じく文武両道の姉を持つ、双子の高校生。
全国大会で会おうと切磋琢磨した両チーム。
そして、同じく優勝したのに出られない全国大会」
「切り口はいくらでもあるな」
麻生Pは感心する。
宗高は江本Dを鋭い目で見据えた。
「で、全国大会に出る事ができないチームを、どうしたい?」
「エキシビションマッチです」
自信ありげな江本D。
「詳しくプランを聞こうじゃないか」
宗高も麻生Pも身を乗り出した。