high-five31ex.《かびれ動物園の穴場》
《high-five15関連》
「あぁ~っ、キリンさんがいない!」
長島依子が大袈裟に頭を抱える。
「キリンって、ジラファのことだ!」
野村寿里が写真とイラストを見て、
ようやく納得した。
『キリンって何? キリンって何?』
帰国子女のリオはずっと尋ねていた。
「どうしたのかな、キリンさん」
西津悠が心配そうにつぶやく。
「仕方ないよ、こんなに寒いんじゃ」
沼尾柚亜がスマホでHPを検索。
「何か書いてあるよ、
『キリンが表に出ていない時は……』
あ、待ってよ!」
根岸桜芽が置いて行かれそうになって焦る。
「次は猿山だよ!」
「サル、サル、サル~ゥ!」
「ちょっと待って、ラスカルがいる!」
「え、ラスカルって何!」
「アライグマの事だよ!」
「カワイイ!」
「こっち見ている!」
「ラスカルじゃないよ、
レッサーパンダだよ!」
「パンダなの!」
「どうやらこっちが本家らしいよ!」
しばし見とれる五人娘。
「あれ、依子とリオは?」
暫くして、いつもかまびすしい、
二人がいない事に桜芽が気付く。
「お手洗いかな?」
「きっと猿山だよ!」
三人で猿山に向かおうとすると、
背後から依子とリオが、
興奮して三人に体当たり。
「痛った~い!」
「何するのよ!」
「どこ行っていたの?」
三人が抗議するが、
二人はお構いなし。
右腕を組んで、
その場でクルクル回り出す。
「キリン! キリン!」
「ジラファ! ジラファ!」
「どうしたの?」
「あんまり騒いじゃダメだよ!」
「説明してよ!」
「キリンがいた!」
「ジラファがいた!」
『こ~んな、近くに!』
二人は顔をぴったり寄せる。
「とにかく、来て! 来て!」
「早く! 早く! こっち、こっち」
訳が分からないまま、
悠と柚亜と桜芽は、
興奮冷めやらぬ、
依子とリオに押されて、
キリン舎の裏の階段を登る。
『キリンだ~!』
本来、熱帯に生息するキリンは、
冬季は一定の気温にならないと表に出ない。
その時はキリン舎の裏から見る事が可能だ。
もちろんガラス越しだが、
最短距離で30センチ。
かびれ動物園、冬の超穴場だ。