high-five43ex.《それはさておき》
《high-five23関連》
8月7日(月)、杜の都総文祭から戻った気象部一同。
部長の成沢遥香、副部長の森山博美。
二年生の大久保、会瀬、金沢、川尻、国分。
一年生の城丘、千石、滑川、水木、宮田。
関校長らと、マイクロバスで各方面にあいさつ回り。
伊立市役所を皮切りに、氷戸市のバラキ県庁を表敬訪問。
ついでにバラキ新聞に、ラジオのバラキ放送。
日本公共放送(NKH)氷戸放送局へ結果報告。
内閣総理大臣賞受賞を触れ回った。
夕方からはNPO法人サイエンス倶楽部が主催して、
ホテル天宙閣で祝賀会が開催された。
誰が呼んだか、市長や市議会議員、
県知事に県議会議員、国会議員まで顔を出した。
遥香は独りやつれ顔。
副部長の森山が万全のサポート。
下級生も甲斐甲斐しく振る舞う。
「遥香、面倒なことは全部私が引き受けるわ」
「成沢先輩、どんな些細なことでも、私たちに任せて下さい」
だって私たちは、七夕伝説の立会人。
奇跡を目の当たりにした、運命の恋物語の伝道者。
『聖ハルカ様』の信奉者よ。
先輩は『あの方』のことだけを考えていて下さい。
夕方のNKHバラキ県域放送で報じられたために、
気象部員のスマホには呼び出し音が引っ切り無し。
遥香はとっくに電源オフ。
森山はこまめに対応。
「……うん、そうなのよ、ありがとう。
それはさておき、実はね……」
その都度、遥香の席から離れる。
二年生の大久保。
「……総理大臣賞なんて信じられない。
それはさておき……部長の成沢先輩が……」
二年生の会瀬。
「……苦労した甲斐があったわ。
それはさておき……例の噂の彼氏と……」
二年生の金沢。
「……みんなで頑張ったから。
それはさておき……そう、バレーボール部の葡萄先輩!……」
二年生の川尻。
「……抱き合って喜んだんだよ。
それはさておき……離れ離れの二人が運命の再会!……」
二年生の国分。
「……土曜日に帰って来たんだ。
それはさておき……七夕の奇跡にみんな号泣……」
一年生の城丘。
「……私なんて何もしていないわよ。
それはさておき……そう、高速バスを追いかけたという……」
一年生の千石。
「……全部先輩たちのおかげ。
それはさておき……伝説の彼氏は超~イケてた!……」
一年生の滑川。
「……今日まであっという間だったわ。
それはさておき……私たちの目の前でばったり出会ったの!……」
一年生の水木。
「……しばらくはゆっくり休みたい。
それはさておき……何と彼氏の胸に飛び込んだのよ!……」
一年生の宮田。
「……ご褒美に美味しい物食べさせてもらっちゃった。
それはさておき……お、思い出しただけで、うえ~ん、うえ~ん……」
数日後、小木津亜弥が多賀冬海に電話。
「……という事だから、
油縄子島遠征のうちにネームを考えておいてね」
「でも、本当にそうだったのかしら?
遥香と葡萄先輩って……」
「この際、真実なんてどうだっていいの。
肝心なのは、みんながその物語を求めているという事実よ」
「何か遥香に悪いような気が……」
「いいって、実名は出さないんだから、
プロットとして頂いちゃいましょう。」
「……分かったわ。
それはさておき、亜弥は一緒に行かないの?」
「う~ん、ちょっとヤボ用があってね、
一日だけ遅れて行くから……」