表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

high-five42ex.《中学二年の夏休み》

《high-five26関連》


 成沢遥美の父、遥香の祖父は合気道の達人。

 下野県で道場を開いている。

 毎年、お盆の夏合宿にはみんなで参加していた。

 道場主の孫ら4人は、蚊帳を吊った4畳半の部屋で就寝。


 中学二年の遥香と、小学三年の媛貴が向かい合わせで、

 媛貴の後ろに小学六年の結貴が、

 その後ろに中学二年の晴貴が、同じ姿で寝ている。


 真夜中。

 玄関先で飼い犬ハルクの耳が、ピクリと動いた。


 9歳の媛貴が、寝ぼけまなこ。

「おお兄ちゃん、おしっこ」

 11歳の結貴を踏みつけながら、

 13歳の晴貴を揺さぶる。

「ほい、ほい……」

 晴貴がゆっくり上体を起こす。

「待ちなさい……」

 13歳の遥香が目を覚ます。

「私が連れて行く……」

「媛貴、お姉ちゃんが連れてってくれる……」

「うん……」

 ボーっとしながら、遥香と媛貴が蚊帳をくぐり抜け、

 手をつなぎながらトイレに向かう。

 晴貴は再び目を閉じる。

 結貴は何も知らずに爆睡中。


 遥香と媛貴が戻ってきた。

 晴貴と結貴は静かに寝息を立てている。


 媛貴はコテンと、元の位置に戻り再び夢の中。

 遥香は同じ姿勢で寝ている3兄妹の様子に吹き出す。


 晴貴の横顔に目が止まった。

 視線は唇に固定。

 四つん這いで、媛貴と結貴を跨ぐように接近。

 しばらく晴貴の様子を観察。

 熟睡しているようね。

 蚊帳の外を見回し、誰もいないのを確認。


 注意深く晴貴に顔を近付けて、

 静かに一瞬だけ唇を合わせてみた。

 ゆっくり元の位置に戻る。


 あぐらをかいて腕組みをして、小首を傾げる遥香。

『う~む』

 幼いチュウなら何度もしたけれど、

 大人のキスとはどう違うのかしら?


 再びゆっくりにじり寄る。

 数秒間、寝ている晴貴と唇を合わせる。

 胸が結貴の身体に当たるが気にしない。


 またしても小首を傾げる遥香。

『なんだかな~』

 期待したようなトキメキなんて感じない。


 もう一回だけ、

 少し長めに、唇を合わせた。

 晴貴はピクリとも動かない。

 のしかかられた結貴は、

 良い夢でも見ているのかニヤケ顔。


 腕組みをしながら考える。

『こんなものなのかしら?』

 憧れのキスとは程遠い。

 相手は寝ているし、

 晴貴じゃ意味が無いのかな。


『う~ん、う~ん』

 二、三度首を傾げると、眠気が蘇ってきた。

 大きくあくびをすると、横になって目を閉じる。

 遥香はすぐにスースーと寝息を立て始める。



 そして……、

 しばらく息を止めていた晴貴の、

 全身の毛穴から汗が噴き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ