high-five42ex.《中学二年の夏休み》
《high-five26関連》
成沢遥美の父、遥香の祖父は合気道の達人。
下野県で道場を開いている。
毎年、お盆の夏合宿にはみんなで参加していた。
道場主の孫ら4人は、蚊帳を吊った4畳半の部屋で就寝。
中学二年の遥香と、小学三年の媛貴が向かい合わせで、
媛貴の後ろに小学六年の結貴が、
その後ろに中学二年の晴貴が、同じ姿で寝ている。
真夜中。
玄関先で飼い犬ハルクの耳が、ピクリと動いた。
9歳の媛貴が、寝ぼけまなこ。
「おお兄ちゃん、おしっこ」
11歳の結貴を踏みつけながら、
13歳の晴貴を揺さぶる。
「ほい、ほい……」
晴貴がゆっくり上体を起こす。
「待ちなさい……」
13歳の遥香が目を覚ます。
「私が連れて行く……」
「媛貴、お姉ちゃんが連れてってくれる……」
「うん……」
ボーっとしながら、遥香と媛貴が蚊帳をくぐり抜け、
手をつなぎながらトイレに向かう。
晴貴は再び目を閉じる。
結貴は何も知らずに爆睡中。
遥香と媛貴が戻ってきた。
晴貴と結貴は静かに寝息を立てている。
媛貴はコテンと、元の位置に戻り再び夢の中。
遥香は同じ姿勢で寝ている3兄妹の様子に吹き出す。
晴貴の横顔に目が止まった。
視線は唇に固定。
四つん這いで、媛貴と結貴を跨ぐように接近。
しばらく晴貴の様子を観察。
熟睡しているようね。
蚊帳の外を見回し、誰もいないのを確認。
注意深く晴貴に顔を近付けて、
静かに一瞬だけ唇を合わせてみた。
ゆっくり元の位置に戻る。
あぐらをかいて腕組みをして、小首を傾げる遥香。
『う~む』
幼いチュウなら何度もしたけれど、
大人のキスとはどう違うのかしら?
再びゆっくりにじり寄る。
数秒間、寝ている晴貴と唇を合わせる。
胸が結貴の身体に当たるが気にしない。
またしても小首を傾げる遥香。
『なんだかな~』
期待したようなトキメキなんて感じない。
もう一回だけ、
少し長めに、唇を合わせた。
晴貴はピクリとも動かない。
のしかかられた結貴は、
良い夢でも見ているのかニヤケ顔。
腕組みをしながら考える。
『こんなものなのかしら?』
憧れのキスとは程遠い。
相手は寝ているし、
晴貴じゃ意味が無いのかな。
『う~ん、う~ん』
二、三度首を傾げると、眠気が蘇ってきた。
大きくあくびをすると、横になって目を閉じる。
遥香はすぐにスースーと寝息を立て始める。
そして……、
しばらく息を止めていた晴貴の、
全身の毛穴から汗が噴き出した。