high-five41ex.《油縄子島》
《high-five23関連》
琉球県、新垣石空港に降り立つ7人。
成沢遥香。多賀冬海。
長島依子。西津悠。沼尾柚亜。根岸桜芽。野村寿里。
空港には葡萄お兄様が迎えに来ていた。
小木津亜弥も、翌日には来る予定。
日本最西端から三番目、最南端から三番目にあたる。
南十字星が見えるユナゴ島。
そこで林檎が待っていた。
林檎は通信教育で学びながら、島の分校のお手伝い。
時々、看護師兼保健婦として働く母・蜜柑のお伴で、
近隣の諸島をめぐる。
父親は一年間、週の半分は諸島を管轄する診療所から、
大きな町の病院へ通い、臨床のおさらいをしていた。
最近、ようやく本島の診療所を拠点に腰を据えた。
葡萄は通信教育で高校の残りの単位を取得、
漁業や農業を手伝いながら、通信制の大学で学ぶ。
宣言通り、林檎の手本となっていた。
分校の先生は定年間近の男女二人きり。
林檎は教室の片隅を間借りして、
自習しながら授業のお手伝いもした。
体育の時間は、若い兄妹が率先して見本を見せた。
最初、子供たちは「林檎先生」と呼んでいたが、
それだけは止めさせた。
分校の先生たちは『いつか本当の先生になりたい』という、
林檎の想いをくみ取って、
子供たちには「林檎ちゃん」と呼ばせた。
冬海は南の島の子供たちにお絵描きを教えた。
亜弥は子役経験がばれて芸能人扱い。
五人娘は子供たちの絶好の遊び相手。
遥香は南の島で思いっきり弾けた。
全ての俗事を忘れ、
晴貴の分まで思いっきり弾けた。
島の中学生・高校生は普段、
学校のある本島に下宿して、油縄子島にはいない。
そこに来たのが、島出身・町屋木苺の孫、葡萄と林檎。
両親の寿應・蜜柑夫妻が、町屋家と養子縁組した。
夏休みには島外の中学・高校に通う子供たちが帰ってきている。
今年は林檎のお友達が8人も遊びに来た。
ワイワイ、ガヤガヤ、きゃぴきゃぴ。
観光スポットのない過疎の進む島は、
久しぶりに華やいだ、賑わった。
島に残った若い男たちは林檎の存在に目が釘付け。
大きな町になじめず、島に戻り、家業を継ぐ者、
都会の人間関係に耐えられず、故郷に帰った者。
何をしても長続きせず、
島と大都市を、何度も行ったり来たりしていた知念萬郷は、
懲りずに一時撤退のつもりで、島に戻った。
実家は、今では島唯一の雑貨屋。
新聞や郵便・宅配便の配達も請け負っている。
島を離れたはずの友達が何人も帰って来ていた。
理由はすぐに知れた。
萬郷も林檎に心を奪われた。
いつの間にか、島の若者たちの中で紳士協定が結ばれていた。
林檎に対して抜け駆けはしない。
挨拶以外に用もなく話しかけてはいけない。
萬郷は実家の家業を手伝う。
両親を店と畑仕事に専念させ、
自分は島中を歩き回り、集配業務を行う。
これなら必ず、一日一回は林檎と挨拶ができる。
悪天候で配達物が届かなくても、
何かと理由をつけては島中で御用聞き。
林檎だけを特別扱いする訳にはいかないので、
知念のバカ息子は心を入れ替えて、
島に骨を埋める気だ、と評判に。
「り、り、り、林檎ちゃん、おはよう」
「萬郷さん、おはようございます」
通信教育を受けている林檎は、
教材の受取りやレポートの提出が多い。
「り、り、り、林檎ちゃん、出すレポートはないのかな」
「萬郷さん、そう急かさないでよ」
毎日、毎日。
何気ない会話が交わされた。