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悪霊ハンター悠子  作者: ヨースケ
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趣味

「ふう、今日も疲れた」

職場を出て思わず口にした。時計の針は午後11時を指している。

相馬玲二。23歳。社会人2年目で、しがない中小企業の下っ端。頼まれると断れない人のいい性格が災いし、上司と同僚からの仕事を押し付けられ、今日も今日とてサービス残業に勤しんでいたのだ。

「はぁ、疲れた」

 口を開けば疲れたと言っている。残業の激務に8月のこの暑さでは、まだまだ若い玲二でも辛いものがある。とはいえ、言動とは裏腹に玲二の気持ちは軽かった。

 そう、今日は週末の金曜日。明日明後日の休みで玲二の気持ちも上向きだった。加えて、玲二にはもう一つの楽しみもあった。それは彼の趣味に関することなのだが、フットサルやキャンプなどといったアウトドアなものではなく、かといって読書や音楽といったインドアなものでもない。

玲二の趣味はホテルだ。別に建築マニアというわけではない。ホテルに泊まること、それ自体が彼の趣味なのだ。

以前残業で終電を逃し、やむを得ずビジネスホテルに泊まった際、自宅と違う居住環境に新鮮さを覚えた。休日にはだらだらと昼過ぎまで眠ってしまう玲二も、ホテルのベッドだと慣れていないせいか朝と呼べる時間に目が覚め、規則正しい時間ゆえに寝覚めも良いのだ。それ以来、気軽に「心地よさ」と「非日常感」を味わえるホテル泊まりに没頭した。没頭、とはいったものの安月給の玲二には、少々変わったこの趣味も月に数回しか実行できないのが悲しいところではあるが。

 予約は先週に済ましていた。なかなか人気のあるホテルのようで、運よくキャンセル待ちにひっかかったというわけだ。そういった経緯もあり、今夜のホテルに玲二はかなり期待していた。場所は錦糸町で、会社のある上野からは10分程度で行けて都合もいい。それに錦糸町には飲み屋もたくさんある。夜の街をぶらぶらするのもこの趣味の楽しいところなのだ。

 ――今日は飲むぞ!そしてホテルで冷房をガンガンに入れて思いっきり眠ってやる……!

 キンキンに冷えたビールとホテルのベッドに思いをはせ、玲二は鼻歌交じりに駅への道を歩いて行った。数時間後、世にも恐ろしい出来事に遭遇するとも知らずに……。


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