目が覚めたけど
良く寝た。とはいえまだ眠いし、まだまだ惰眠を貪りたい。
布団を被り直そうと手を伸ばすと、パリパリと何か乾いたものが破れる音が聞こえた。
……やべ。何か破いた。枕元にポスターか何か張ってあっただろうか。
慌てて手の先を見ようと身を捩ると、体の周りからパリパリと何かが破れる音がして、一気に景色が変わった。
なんだ?
というか、ここはどこだ?
体の下にあるのは……土?いや、石?
よく分からないけど少なくとも布団ではない事くらいは分かる。
ざらざらする地面を撫でると、さっき破いた何かを見つけた。白くてカサカサする、紙みたいな何かだ。
これは何だ?布団ではないよな。うん。
いくらなんでも、地面の上で紙に包まれて眠る習慣は持ってない。
辺りを見回すと、同じような紙の塊が沢山転がっている。
なんだこれ。
近付いて紙の表面を触ってみると、パリパリと簡単に砕けて、中にいた何かが液体と共に落ちてきた。
うわ。半透明のトカゲだ。しかも俺と同じくらいの大きさ。気持ち悪い。
驚いて一気に距離を取ると、半透明のトカゲは小さく震えたあと、動きを止めた。
【ベビートカゲを倒しました】
ピコン。という軽快な音と共に、脳内に文字が浮かび上がる。
へえ、あれベビートカゲっていうのか。
…………じゃねぇ!
なんだ、今の。今のはなんだ!?
いやいや……いや。あれ、あれだ。
一瞬びっくりしたけど、ほら、見た目があんな如何にも生まれたてのトカゲですって感じだったからな。自分で、ベビーなトカゲを倒しました。って思ったってだけだ。そう。そうに違いない。何も怖い事はない。ノープロブレム。俺は出来る人間だ。大丈夫。怖くない。もう一回やってみよう。そうしたら分かる。
もう一度近付いて、紙……いや、ここまできたら俺でも分かる。卵だ。トカゲの卵。さっき割ったやつの隣の卵に手をかける。
パフッ。
なんだか軽い音がして、卵から空気が抜けた。
なんだ、ハズレか。
きっとこれはもう孵ったあとの残骸なんだな。
そう思って上を見ると……そこに、巨大なトカゲがいた。
…………あ、こ……ここ、こんにちは。
「キシャー!」
で、ですよね。そりゃ、言葉なんか通じませんよね。
目を合わせたままジリジリと後ろに下がっていき、トカゲが瞬きした瞬間、後ろを振り向いた俺は一気に逃げ出した。