余章
●余章 ―With You―
―???―
勇者は眩い光りの中に居た
勇者「ここは…どこだ?俺は死んだのか?」
勇者は己に問いかけた
勇者「いや、違う」
そして自らの考えを否定した
勇者「いや、そうじゃない。お前の言葉を否定したんだ。俺は自らに言葉を向けた訳では無い。お前に聞いたんだ」
私に?
勇者「そうだ」
申し訳ない。想定外の事態故に対応出来なかった
勇者「いや、それは良い。とりあえず俺の質問に対する答えはどうなんだ?」
死の定義による。何を以って死んだと定義し、何を以って生きていると定義するかが問題。それが確定しない内は、どちらとも判別出来ない
勇者「エレナやエレルのような屁理屈を…」
これは屁理屈では無く事実。私の主観では誤解を招く恐れがある
勇者「成る程…負けず嫌いなのではなく、融通がきかないのか」
その見解は否定しない
勇者「思い返してみれば、国境での帝国の勇者との戦いもそうだったな…あの時はどちらがどの勇者か紛らわしかったぞ」
複数の勇者が同時に存在する事態は想定していなかった
勇者「だが、軌跡描く奇跡で召還した時はちゃんと名前で呼んでいただろう」
あれは勇者ではなく召還物として扱ったため
勇者「………何と言うか…いや、突っ込むだけ無駄か」
貴方が何を望み、どんな返答を欲しているか判らない。これは、単に雑談を行いたいのだろうか?
勇者「雑談か…それもありだろうな。誰かと話したい思い出も、山ほどある事だし……そう言えば…勇者になった瞬間から、お前の声が聞こえるようになったんだったな。お前もマオウシステムの一部なのか?」
ナビゲーションシステムの一部ではあるが、マオウシステムに属している訳ではない
勇者「成る程…まだまだ俺の知らない仕組みがあるんだな。あぁ、そうだ。だったら…言っておく事がある」
聞こう
勇者「今まで…俺と共に居てくれてありがとう、お前のおかげで助かった」
……………
勇者「何だ、俺はまた変な事を言ったか?」
否定する。変ではないが想定外の言葉を向けられたため対応し切れなかった
勇者「…お前はお前で難儀な存在だな。そう言えば、もう一つ聞いても良いか?」
許可する
勇者「マオウシステムはどうなった?俺は刺し違えてでもあれを倒す事が出来たんだろうか?」
定義にもよるが、マオウシステムその物は未だに健在
勇者「…………そうか、くそっ!!やはり俺の力では、マオウシステムを倒す事など叶わないのか…」
質問の意図を理解。健在ではあるが、倒せない事と同意義では無い
勇者「どういう事だ?」
本来は魔王として覚醒するためのスキル…覇者の叫びを使った時の事を思い出して欲しい
勇者「無我夢中だったから良く覚えてないんだが、あの時は確か…魔王じゃなくて、覇者とかいう訳の判らない物にクラスチェンジしたな」
そう。魔王では無く、勇者と魔王…人と魔…聖と邪の覇者となった。それにより、不測の事態が発生した
勇者「人と魔…エイベル様とカライモンのあれのような物か?」
ベクトルも規模も違うが、ニュアンスとしてはその認識で構わない
勇者「それで、その覇者になって事で発生した…不測の事態というのは?」
マオウシステムに僅かながらダメージを与えた事。あれは人間の集団深層意識その物で、本来ならば物理攻撃は勿論魔力でも傷を付ける事など出来ない筈だった
勇者「そう言えば、そんな事をエレルが言っていた気がするな。しかし、与えられたダメージはたったの1だった……あれでは」
………無自覚のようなので、改めて説明する
勇者「え?何か怒ってるか?」
あの時、勇者の行動により心を動かされた人間が少なからず存在した…つまりは、マオウシステムの存在を部分的ながら揺るがす事が出来た
勇者「………そうか、こう言いたいんだな?もし人類全ての意思がマオウシステムを必要としなくなれば…」
そう…その時は、覇者の力によりマオウシステムを完全に消滅させる事が出来る
勇者「成る程………」
ただ、その条件を達成する事は極めて困難
勇者「困難な道だからと言って、避けて通るのは勇者のする事では無いよな」
貴方ならばそう答えると思って居た
勇者「しかし…こんな状態では、その可能性を掴む事さえ儘ならないな。一体どうした物か…」
その問題に対しては、解決策が存在しない訳ではない
勇者「………本当か!?」
嘘を吐く理由は無い。ただし……
勇者「ただし…?」
ここから先は、納得出来なくても無条件に私の言葉を信じて貰い、貴方本人にも苦難の道を進んで貰う必要がある
勇者「望む所だ」
それを言うのならば、臨む所………いや、貴方ならば……
勇者「どちらでも良いさ。どちらでも間違いは無いからな」
……流石は勇者。では意志確認完了…再び始めよう
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続編 ―ユウシャシステム― に続く