貴方がいるから
わたしはどの位そうしてしゃがみ込んだ儘でいただろう?
足が痺れて来て立ち上がる。近くのベンチに腰掛ける。
眩しい朝の煌めきに神社が欠伸をしそうな。
太陽に照らされる、拝殿が薄く影を引く。当たり前の景色、だけれど。
気分は晴れない。
新しい陽光を浴びるわたしは、もう昨日のわたしではいられない。
それは変わらぬ真理の筈だ。でもどうしても昨朝の感覚では呟けなくなったコトバで。
軽く息を吐く。腰を上げる。
帰ろう。
家に、帰ろう。
いまならスザクはいない。
止めるであろうひとは、いない。
唐破風神門へ歩く。
だが……門を、くぐれない。
家に帰れば、いまし方もらったばかりの美味な鴨はどうなる? 返す事になるのか?
家族があんなに喜んでいた鴨を?
父母が嬉がっていたのは何も味の事だけではないだろう?
巫女様を出した家の誇り。
それも含めての歓喜だっただろう?
溜め息を吐く。
鴨など、受け取らねばよかった。
ベンチに戻り又、溜め息を吐く。
……こうなったらやるしかない。
もう巫女になるしか、ないではないか。
大した理由もないのに?
唯、他人の勘、で決められる……。
わたしの未来……?
全く、わからない。
自分が恋愛成就を願わない事をわたしは知っているのだから。
誰のため?何のために?
神様の近くで何をする……?
好きなひとへの祈願効力向上のためではなく、
島民の安寧のための、巫女様か……?
悪くない。
うん、悪くない……。
好きなひとのいるこの世界を守れる力がわたしにあるのなら……?
巫女様になる事も、悪くないって、想えるだろう……。
だって好きな人と再会してわたしはどうしたいのだろう……?
それを考えるのが怖くて恐ろしい……。
なら。




