ファースト・コンタクト
視点スザクに変わります。
「あちゃー? 思い余ってやっちゃったー」
僕の目の前には、トランス状態になった巫女様候補……もとい成宮あこはが目をつむった儘で立っている。
先程、僕は彼女に口付けたのだった。
成程、僕のキスでこうなったのだから彼女は巫女様だ。
僕は傍に控えている筈の式神に声を掛ける。
「羽仔ー? いるー?」
「は」
すると、スザクと成宮あこはの周りに緑色のドームが展開された。結界だ。
「さんきゅー」
スザクは虚空に向かって微笑む。
ぶわあああっ……、と、風もないのに閉じた空間の空気が揺れる。
あこはが眼を開ける。
灼熱の視線だ。
その口からコトバが零れ出る。
「貴方は……あのときの……」
スザクは彼女の前に片膝をつく。
「よい、面を上げなさい」
彼女の纏う雰囲気は一変していた。もうあこははあこはではない。彼女には神が降りた。
「その節はお世話になりました」
「いえ、わたくしの力が足りず、貴方には辛い思いをさせました……」
「そのような事既に忘れました」
「そうですか……」
暫し沈黙が流れる。彼女は何事か僕に訊きたいようだ。だがそれを口に出すか迷っているらしい。
スザクは待った。
「あら……?」
彼女はいかにも不思議そうな口調で話を切り出した。
「どうか、なされましたか?」
「貴方も鍵の子に……会ったのですね」
「キーガールの事ですか」
「ええ」
「会いましたよ」
「そう……。血は争えないですね」
「……ええ? 血は争いを好みません」
僕の父も又、僕と同じく神官だった。
彼女はくすりと笑みを漏らす。
「そうじゃないわ」
「はあ……?」
「ふふふっ、そうじゃないのです。細胞に訊いて御覧なさい? 貴方の体が全てを覚えている筈ですから」
彼女は切なそうに微笑む。
僕には彼女が何を云っているのか全くわからない。
「本当にメーガル神なのですか?」
「失礼ですね? わたくしはメーガル神です。ここはわたくしの島です」
「御無礼致しました。神様の御意向など、愚かな人間には推し量る事すら敵いませんので」
「随分と申す事」
「いえいえ、メーガル神さま程では」
不意に不穏な予感がした。果たしてメーガル神はにっこりと、僕に笑い掛ける。
「貴方にとって成宮あこはは幸せの在り処になりますよ?」
「はあ……」
「気のない顔」
「私は巫女様を御守りするだけです」
「……そう云ってばかりいると又、失くしますね」
「おっしゃっている意味がよくわかりませんが……」
「貴方には絶対に理解出来ないでしょうね……わかってほしくも、ないですけれど」
「ひどい……」
「知りたいなら、失くせば、いいのです」
「はあ……」
「まあ? わたくしとした事が色々と、喋り過ぎてしまったようです……」
この神様は一体何を云いたいのだろう……?
不思議に思っていると突然、空気が変わった。
立ち尽くす成宮あこはが呆然と、その前に片膝をつく僕を見下ろして来る……。




