ヴァージン・オヴ……
ルリカ島は星の形をしている。
それを形作る五つの角は北から右回りに桜、桃、梅、菊、葵の角と呼ばれる。
ルシアカ王が建てたと云われる花山城を中心にして。
その城から南東の方角つまり梅の角の近くに鴨鐘神社はある。
わたしの家がある桜の角とは反対側で、馬の足でも五日はかかる。
だが鴨鐘神社の神官、音木スザクと名乗った美男子はなぜか歩いていた。
わたしにはなんとなくその行き先の見当が付く。
見慣れた唐破風神門、凹凸ある石畳、小さな狛犬……、ここはいつもわたしが通っていた鴨肉神社ではないか。
そのとき不図閃いた。
もしわたしが巫女様になったら、願いを叶えやすくなるのかも知れない。有り余る霊力のお蔭で。
好きなひとの幸せを。
……彼がたとえ、わたし以外の女の子と笑い合う時間にそれを見出だすとしても?
いっそ彼との、再会を、願えれば。
わたしは溜め息を吐く。
「あーごめん、ここは鴨鐘神社じゃないよね?」
すると何を勘違いしたかスザクが申し訳なさそうな表情をする。
「いや、そうじゃなくて……」
わたしは彼と再会して、どうなるんだろう?
もう、三年も会っていないひとと。
記憶の中にしかいないひとと。
……再会は、嬉しい筈だろう?
だけどその後一体何ができるのだろう。
「どうしてわたしを巫女様にしたの」
わたしは彼に何を望むの……?
「さあ?」
「……は?」
スザクは軽い口調だった。
「強いて云えば勘?だよー」
「勘……」
わたしは脱力する。
「それよりこれから……」
何かスザクが言いかけるのを遮ってわたしは、
「スザク……ってほんとに鴨鐘神社の神官なの?」
「そうだよ?」
……勘でわたしを巫女様にするなよ。
「袴はお飾り?」
「? 本物だよ?」
スザクが着れば何でも襤褸でも着こなしてしまうだろう、だが。
「それとも方向オンチなの?」
わたしは巫女様になりたい訳じゃなく彼を好きでいたい、だけだ。
「いいや。そもそもここが終着だなんて誰が云った?」
「……?」
不意に唇からわたしは鷲掴みにされた。
最前迄の乱れた思考もスザクが造り出したこの空白と、一拍遅れて来た自分の鼓動に掻き消される。
脳に浮かぶ寸前で散ったコトバを繋ぎ止める術も、わたしには、意志すらない。
わたしは唯スザクが神官だと思いたくないだけなの!
「それならきみは、巫女様だよ?」
書き直しました。




