落雷
家に帰ると、わたし宛の手紙が届いていた。
差出人は鴨鐘神社だ。
鴨鐘神社の祭神はルリカ島を造ったとされるメーガル神だ。神社を建てたのはメーガル神から島の統治を任された幻のルシアカ王だと云われている。島で最も由緒ある社だ。
その話が本当かどうかはさておき。
「へんなの」
そんな格式高い神社がわたしに一体の用か。
封筒の中には紙が一枚入っていた。
だがその薄っぺらな紙が雷だった。
『成宮あこは様を当神社の巫女としてお迎えしたく存じます』
手紙には時候の挨拶の後にそう書かれていた。
わたしの脳天は稲妻に貫かれた……。
鴨鐘神社の巫女は島を導く存在だ。
穏やかな民は巫女様の神託を頼りに海山の憂いに備え安寧を保って来た。
島民の信頼と尊敬を集め女の子なら一度は憧れる。
その、巫女様にわたしがなる……?!
あり得ないと首を振る。
わたしには霊力があるのか……?
神に仕える強運があるならいっそ彼に仕えさせてください……!
「わたしは……唯、彼を好きでいたいだけなのに…… !!」
この文が神社を語る不遜な嘘であればいい。
手紙はつづく。
『つきましては急な話で誠に恐縮ですが、翌早朝五時頃使いの者を送ります』
脳ミソがクラクラして来る。
わたしは巫女様にならねばならぬのか……?
そもそもなぜだ。
巫女の選定は神官が行う。
いつどこでどうやってわたしに決めたのか?
これが恋愛成就の御札だったら今後必ず日参するのに。
取り敢えず家族に相談しに行った。
巫女を出した家はお祝いに神社から、美味な鴨を下賜される。
いまからそれが楽しみだと笑う父母の暢気さに溜め息が出て来た……。
最近「つまらない」の反対語が「楽しい」じゃないって聞きました。
刺激あるお話を作れるよう命を尽くします。




