プリンセス・ハグ
不意にわたしの足が地面から離れた。
「えっ?」
「御姫様抱っこだ」
スザクの笑む口元が確信犯だ。
わたしを抱え彼は部屋を出ていく。
「どこへ行くの?」
誰もその問いには答えない。
羅名はクスクスと笑いながら、
「巫女様抱きでしょ?」
話をふくらませていく。
「……」
羽仔は黙った儘だ。
わたしは反論する。
「巫女様になるなんてって言ってないし」
「え? そうだったんですか……」
「そうよ?」
みるみる青ざめる羅名の顔が解せない。
スザクは歩む足を止めない。
社務所の外へ出ると、羅名の表情は諦めの色を写していた。
「羅名さっきから変」
「さあー。何の事ですか巫女様ー」
「白々しいわよ」
「よし、しっかり掴まれ」
ふわっとわたしの体がもち上がる。
思わずスザクの首にしがみつく。
遠ざかる土と近付く空の天井、羅名が胡麻粒になっていく。
わたしたちは空を飛んでいた。
「わあっーー壮観。じゃなくて降ろして?」
「どーして、巫女様?」
御姫様抱っこで空を飛ぶスザクが訊き返す。
ああ、全身が熱い……。
最早手遅れか……、しかし何に?
「いいから降ろして」
「離してもいいけど落ちるよ。死ぬよ?」
「む……っ」
二の句が継げない。
「抗ってもきみは巫女様だよ」
「だから……」
わたしは未だ巫女様になると云っていない。
その反論をスザクは遮って、
「寄り道しよう」




