死にたくないの……
「綺麗ですっ……お綺麗ですよ、巫女様っ」
「まだそうと決まった訳じゃ……」
姿見に映った巫女姿のわたしを見て羅名が又アクアマリンの瞳を潤ませる。
羅名に誉められてわたしも満更ではない。
羅名はついでと、わたしの肩までの髪を梳かし始める。
わたしは鏡台の前に座り、羅名にされるがままに委ねる。目をつぶる。
わたしは忘れたくない。
物わかりよくは終われない。
好きな人と会えなくなったって。
平気だ。
失恋には頷かない。
叶わない儘、好きで想いつづける。
新しい生活になど馴染まない。
この気もちを失なったらわたし、死ぬわ。
「ねえ? 巫女様」
「何?」
不意に現実に引き戻された。
「ちょっと、こっちに来てください」
わたしの髪を梳き終え、手招きする羅名につられ椅子から立ち上がる。
わたしの手を引き、羅名は部屋を出ていく。
薄暗い廊下を歩く。
連れて来られたのは他の部屋の、扉の前だ。
「羅名……?」
わたしの困惑を知ってか知らずか、羅名は足を止め、振り向く。声を潜めて、
「スザク様に……お見せしたくて……」
「えっ?」
このドアの向こうにスザクがいるのか……!?
「やだっ」
思わず、叫んでいた。
「わたし、スザクに会いたくない……」
熱の残る唇が、燃え上がる。
「巫女様……?」
「スザクに会ったらわたし、死んじゃう……」
間の悪く、そのとき部屋の扉が開いた……。




