衝突
「んじゃ、今日も歩きますかーっと!」
俊介の大きな声が静かな朝の空間に響く
忘れ物をチェックした後、俺たちはすぐに宿を出た
深夜に寝て早朝に起きて1日歩く
非常にハードなスケジュールだが、弱音は吐いていられない
一刻も早く、藍輝に会わなければ
これ以上、彼の心が壊れてしまわぬように...
外を歩く時、俺は顔が見えないように頭と顔に布を巻きつける
バレたら命を狙われることしかないからだ
悲しいことに
炎天下の中をしばらく歩き続ければ、かなりの疲労も溜まるものだ
「そろそろ、昼食とろうか。あそこのカフェで」
俺の提案に2人もかなり疲れていたようで、2人揃って大きく頷いた
その姿に、俺は思わず頬が緩んだ
カランカラーン
入店のベルが鳴る
「いらっしゃいませー何名様でしょうか?」
俊介が3本の指を立てて3人だということを示した
「3名様ですね。こちらへどうぞ!」
こころなしかウェイトレスの声が高めな気がする
やっぱり2人がイケメンだから気合い入ってるのかなぁ〜
イケメンは得だよなあ
俺は心の中でひっそりと声に出すことなく少し拗ねていた
とりあえず、席に通されて、各々好きなものを注文して、食事を開始した
この食事が少しだけ厄介で、ものを食べるということは必然的に口元の布を取らないといけないので、周りにバレないように細心の注意を払って食事をしなければならない
しかしまぁ2人が俺を挟み込んで隠してくれるので、至って和やかな空気で食事を終えた
だから俺は、安心しきっていたのかもしれない
店から出るとき、ガラの悪い集団の1人にぶつかってしまった
その時
食べ終えた後だから布の結び目が緩くなっていたのかもしれない
スルッと、俺の顔に巻いてあった布が取れてしまったのだ
「いってぇなクソが!」
そうやって俺の顔を思い切り睨みつけた男は、俺の顔を見ると驚いた表情をした
(ちくしょう...しくじった)
俺は心の中で舌打ちをした
「おい!!こいつあの本郷家の長男!本郷海輝じゃねえか!!」
店中に響き渡る声で叫ばれてしまった
瞬間、周りはざわめき、男達はニヤニヤとしたいやらしい顔になった