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プロローグ

〜8年前〜


「父上!話が違います!」

大広間に俺の叫ぶ声が響き渡る

父上は依然として無言でただ俺をジーッと見つめていた


「俺が!この手術を受けたら藍輝には何もしないって!約束だったじゃないですか!」


本郷家には、代々受け継がれている家宝が2つある

1つ目はワインレッド色に透き通る美しい宝石

もう1つはダークブルー色に輝く美しい宝石


この2つは本当に貴重な価値のあるもので、これを狙う悪い輩は世界中に大量にいる

もちろん普通に守っているだけでは盗まれておしまいだ


だから....


この家に出来てしまった、忌々しい伝統。


生まれた男の子が10歳になると、その体の中に宝石を埋め込む


そしてこの家には、代々不思議なことに男子の双子しか生まれない


だから、最初から、この家に生まれ落ちたその日から


決められていたんだ


命を狙われなければいけない、運命を。





「俺が!2つの宝石を受け入れたら!藍輝には何もしなくていいって、、、言ったではないですか父上!」


「海輝」


それまで全く口を開かなかった父上が、ようやく声を発した


「やはり1人の体に2つを埋め込むのはリスクが高すぎる。お前が死んでは意味がないだろう?」


「もう、決まったことなんだ」


静かな、それでも有無を言わせない声だった


「そんな....」

俺はショックのあまり呆然と立ち尽くした


しかしそこに執事が現れて俺にあまりにも無情な宣告を告げた


「海輝様、手術の時間がやってきましたのでどうぞこちらへ」


そう言って後ろに着いてくるように促すと俺の周りはすぐに見張りに囲まれた


自分の家なのに、まるで囚人にでもなった気分だ

俺は苦笑し、悔しさに拳を握り締めた


後ろを振り向けば、父上はいつの間にか大広間を去っていた






手術室に入ると、両手両足を机に拘束された


抵抗はしなかった

「俺が」傷つくことには抵抗はない


ただ...


藍輝の手術は俺の手術が始まってから1時間後に始まるらしい

これはちょうど俺らが生まれた時差と同じだ


「あの...」


俺は拘束された状態で首だけ持ち上げて手術担当の医師に声をかけた


「どうしても、どうしても、、藍輝もこの手術を受けなければいけないんですか?」



生まれた時から一緒で

いつもいつも俺の後ろについてきた可愛い弟

少し控えめな性格でなかなか自分から友達を作ろうとはしなかった

それでも

俺にだけ向けてくれる笑顔はどうしようもなく愛おしかった

「お兄ちゃん」と呼ぶ声が大好きだった

俺の、たった1人の弟


その笑顔がなくなるなんて...



「海輝様、申し訳ございません。手術の時間となりました」

医師は俺の問いかけに無表情で答え、メスを取り出した


叫び声を殺すために口に布を巻かれ、目隠しをつけられた


この手術は特殊なため、麻酔は、使えない。


「ゔっんんんゔっんー!!!!」


腹部を切り裂かれる鋭い痛みに俺は目を見開いた

体は激しく跳ね、布越しからでもくぐもった叫び声が部屋中に響いた


体に、異物が入る感覚


手術は、1時間程度の短いものだったが、永遠のようにも感じられた


でも、これだけで終わりではない。


俺に埋め込まれたワインレッドの宝石は、人を選ぶ

だから、いくら俺が本郷家の血筋とはいえ、初めの抵抗が酷い

それだけで命を落とすものもいるほどだ


俺は拘束されたまましばらく酷い抵抗に苦しみもがいていた


それでも、俺が苦しむ分には一向に構わない


ただ...


藍輝が、今、俺と同じこの痛みを受けているのだと思えば、体よりも心が酷く痛んだ


目隠しは、涙でぐちゃぐちゃに濡れていた










そして、

手術から1週間後、体に石が馴染んでようやく外出を許可されたとき

1番に藍輝のもとへと駆けつけた


「藍輝!!........あい、き?」



そこに、居たのは


以前の目の輝きを無くしてしまった


人が変わってしまったような


愛しい愛しい弟だった



「海輝」


そう言って、彼は美しく笑った



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