其の八 腹黒い三連星
氏治「そういえば、那須資胤殿が小田原討伐の陣営に加わってたわね」
八幡「あぁ、ジェットスト○ームアタックの人たちか」
氏治「那須さんちって一貫して北条に付き続けるのかと思ったんだけど、意外だったわね」
八幡「それはお前も同じこと思われてんだぞ?」
氏治「……」
白木「そういえば、那須家とはどのような家なのでしょう? 私は荒事には疎いのであまり存じていないのですが……」
氏治「そうね、那須さんちとは国境が接してないものね。北条陣営で一緒になることも多いから私は割と話したことあるんだけど、あそこも山間で少ない平野を家臣同士でとりあうから大変らしいわ」
白木「それは何とも悲しいことですね……私は小田家に生まれて本当に恵まれてますわ」
氏治「ありがと。まぁ、家中で争いが起こらないのは確かにうちくらいかもね。結城、里見、宇都宮に千葉だって一族か重臣と揉めて何処も火種が燻ってるからね」
八幡「しかし、那須家はほんと資胤に同情したくなるほど酷だよな」
資胤「まことにその通りでのぅ。言う事を聞かぬ家臣ばかりに胃の腑の痛みが増すばかりじゃ……」
氏治「うわっ! 資胤殿!? 何故ここに!?」
資胤「領内にいるとほとほと疲れるのでな。ここは安穏の地と聞いて参った」
氏治「はぁ……」
八幡「しかしまぁ、悪い噂はかねがね聞いてますが、大田原三兄弟にはどんな嫌がらせを?」
資胤「うむ、それが領内でしょっちゅう反旗を翻すし、かといってあ奴らが居らねば当家も領土を保てぬ故、誅殺はされぬと高を括って嫌味ばかり小姑の様に言ってきよる」
白木「……それは武将としていかがなものでしょうか……?」
資胤「それに、困ったことに奴らはなまじ有能なせいで、発言力もあるわ軍備もあるわでのぅ……つい最近、田舎の山奥なんぞまでに佐竹が食指を伸ばしてきようてな、あの貪欲爺、腹立たしいにもほどがある!」
氏治「佐竹はほんと面倒くさくて嫌な奴よね~資胤殿、良くわかりますよ~」
八幡『はたして、倒しても倒してもゴキブリのように湧いて出てくる小田家と、兵力少ない癖に危険な謀略を隠し持ってハエの様にうっとおしい那須家。佐竹にとってみればこちら側の方がはるかにうっとおしいことこの上ないだろうな……』
資胤「しかし、奴らが居なければその時の佐竹家とて防げなかったというのが悔しくてのぅ……」
氏治「資胤殿……」
資胤「だぁぁああ!! しかし! 奴らときたら、数百の手勢しかおらぬわしと本陣を山の上に置いたまま、伏兵として伏せるなどと申して山中に入ったきりうんともすんともせんのだ! しかも数千の佐竹の大軍の前にほっぽり出したのだぞ!? わしは大将だというのに!!」
氏治「それは許せませんね! 不忠の極みです!」
白木『……氏治様は正反対に自分から前線に出てしまいますものね……』
資胤「十倍にも近い敵に突撃されて本陣は乱戦状態、わしも怪我を負ってあわや討ち死にかと思うたその時になってようやくあ奴らは出てきおった! 奴らはわしが討ち死にするのを待っておったのだ!」
八幡「それは何と言いますか……ご愁傷様ですね。ですが、その戦いはおかげで佐竹に大勝利したとか」
資胤「偶然勝ちを拾っただけよ。奴らはそれを手柄だなどとぬかすは、わしが怪我を負ったことを不問にしてやると申せば、今度は明らかに馬鹿にした顔で呆れてため息などつきおった! ふざけおって! 思い出すだけではらわた煮えくり返るわ!!!」
八幡「流石は腹黒三兄弟……」
八幡『ん?……総大将を囮に……か……』
氏治「なんだか急に寒気がしてきたわ……」