其の二十 八幡廓落成式・第四編
沼尻又五郎…小田六騎。三十代中ごろの年齢だが見た目は二十代中盤くらいにしか見えない。若々しい見た目とノリの軽さから親しみやすさが滲み出る。
関刑部…小田六騎。割と生真面目で気のいいおっさん。四十後半でいい人ではあるが空気が読めない等人付き合いとしての欠点が多い。
友部主膳…小田六騎。何事にもやる気がなく何かと冷めてる。内政は隠居した六十の親に任せて自分は軍事しか仕事をしない三十代。
江戸山城守…小田六騎。小田六騎の中では鈍斎を除いて武勇に欠けるが、知略等に優れ、氏治以外の一門が大将として出陣するときには副官として任じられることが多い。
野中瀬鈍斎…小田六騎。つまり上記の者たちは鈍斎の同僚。
沼尻「鈍斎のやつ、本気で殴ることもないだろうに……腹いせにあいつの恥ずかしい話を……って! まて、鈍斎! 話せばわかる! 包丁は投げるものじゃないからな! 構えるな、構えるなって!」
八幡「鈍斎と沼尻殿って仲悪いんですか……?」
手塚「いや、あれは仲がいいんだ。わし等四天王も氏治様の世話でとても鈍斎まで手が回ら無くてな。沼尻殿はあれでも割と人は良いのだ。元より武の色の薄い野中瀬家の家督争いを勝ったぐらいでなんだと鼻で笑う者も多くてな。そんな時に沼尻殿が手を貸して城主の仕事を教えたのだ」
八幡「へぇ、じゃあ、あの人も鈍斎の恩人かぁ」
手塚「あの年でよく頑張っているとは思うがのぅ。それでも多くの支えが無ければやはり女子で武家などそうは出来んよ」
関「なんだ、相変わらずおどれらは仲が良いのぅ。本当に衆道なんぞぉぅぐふぉぁ!?」
友部「いい年のおっさん共が何餓鬼一人いじめてんだよ下らねぇ」
江戸「八幡殿、此度は祝いの席にお呼びいただき、誠かたじけない限りでござる。いやはや、立派なものですな。飾り気こそないものの、木の特徴が前に出た良いつくりでござりまする」
八幡「あ、ありがとうございます! 解りますか!?」
八幡『やべぇ、一番安いプランで作らせたとは言いだせねぇ』
江戸「えぇ、解りますとも! ここの造りは……」
八幡『この顔は話が長い人っと……』
友部「ところで、あんた誰?」
八幡「……俺が八幡なんですが……」
友部「あっそう? おめっとさん」
江戸「こら! 友部! こちらは御仏の使いで、それを抜きにしても今回の主賓だぞ!」
友部「はぁ、いや、こう見えても実はちゃんと祝うつもりあるんだよ? 見てよこれ、いい刀だろ?」
八幡「ありがとうございます……」
八幡『使わねぇーー!!』
江戸「では、某共はそろそろ席に参ります故、これにて失礼」
八幡「あ、はい」
八幡『六騎も六騎で濃い人多いなぁ……』
氏治「そういえば、一門六家のみんなは領土防衛の関係で欠席だって。祝辞だけは私が預かっているから」
八幡「そなの? 俺、六家の皆さん北条殿以外よく知らないんだけど」
氏治「みんないい人よ。宍戸家と岡部家と谷田部家は近いからそのうち挨拶に行くといいわ。柿岡家と小幡家は前線を支えているから機会が無いと難しいわね……」
八幡「そうか。了解。まぁ、人も大体集まったから後は行方殿かな……」




