其の十九 八幡廓落成式・第参編
氏治「つまんない……」
八幡「仕方ねぇな……ほれ、水あめ。これでも舐めてろ」
氏治「ありがとう! でも、台所はどうしたの?
八幡「さっき『当主である氏治様をお暇にさせるとは何事か! お相手を務めてこい!』と鈍斎に説教されてな」
氏治「そっか。ありがと、水あめおいしい」
手塚「酒はどこじゃー!!」
八幡「うわ!?」
手塚「はっはっは、八幡殿。御呼ばれした故遠慮なく来てしもうたわ! はっはっは! さて、駆けつけ三杯といこうかの? ん? まだ誰も居らぬではないか、どうしたのだ?」
氏治「まだ始まってないわよ……」
八幡「手塚殿が実質一番乗りと言ったところですね。もしかして、他の四天王の方々もじきにつきますか?」
手塚「うぬ? どうだろうなぁ。菅谷殿はわしが『酒の席ゆえいくらでも飲み、酔えような?』と言うと引っ込みよったし、赤松殿も飯塚が来ると聞いたら気分を害して居館へ先ほど戻られた。祝儀だけは預かっておる故、先ほど八幡殿の配下に預けたわ」
八幡「菅谷さん……どうしたんだろ。赤松殿も飯塚殿と仲悪いのか……? ん? ところで、飯塚殿も来るんですか? 珍しいですね」
手塚「ん? 来ぬよ?」
八幡「え?」
手塚「いや『面倒だからわしはいかぬが、せっかくの祝いの席をはなから蹴っておると思われるのも好ましくない故、赤松殿等にはわしも来ると伝えておいてはくれぬか?』と、頼まれてな」
八幡「単なる嫌がらせかよ……」
八幡『四天王意外と仲が悪いな……』
氏治「まぁ、でも頃合も良いし、皆もそろそろ集まってくるでしょ。手塚、それまで勝手にお酒に手を出しちゃだめだからね」
手塚「う、うぐぅんぬ……」
沼尻「うっす、八幡殿~何か手伝おうか?」
手塚「ぬ? 沼尻殿も来たか。相変わらずお主は三十路には見えぬ見た目よな」
沼尻「はは、小童と言いたいんですか? そりゃぁ、手塚殿と比べられたら拙者なんてまだまだですよ」
手塚「なに、とても元服した子供の親とは思えぬ若さで羨ましい限りだと思ってな」
沼尻「な~に言ってるんですか。手塚殿もまだまだお若いでしょう? 夜の方もまだまだ元気とか。側室でも娶らないんですか?」
手塚「生憎今の妻を愛しておるのでな」
八幡「しかし、相変わらずノリが軽いですね沼尻殿。一応仕事は特に。鈍斎とかも台所を手伝ってくれてるので大丈夫そうです」
沼尻「へぇ、鈍斎がねぇ。三年前は武士のことが右も左もわからないような弱弱しさで、大丈夫かどうか不安だったがな。立派になって料理もできるとは感心だ。料理できる男はモテるぞ」
氏治「そういえば、沼尻って鈍斎と仲いいわよね。なんで?」
沼尻「なんでって言われましても…… ッ!! 実はですね……ここだけの話ですが……我々は衆道のなk……グげ!?」
鈍斎「くだらない冗談言いに来たなら帰れ。氏治様の前でまで下品なことを言うならその首跳ね飛ばすぞ」
沼尻「ズビバゼン……」




