其の十四 葵の仕事メニュー
葵「おはようございます。私は朝の寝起きはいい方なので四時半には起きてお仕事の支度と兄弟の朝食の支度もします。え? なんで四時半というかですか? 寅の刻半とかって言われてもわかり辛いからだそうです」
八幡「うん……そう……で、なんで俺が起こされてるの……?」
葵「なぜでしょう? なんだかそうするように言われた気が……」
八幡「俺、自分の屋敷にいた筈なんだけど……まぁいいや」
葵「登城するのに小汚いといけませんから、寒くても朝は必ず水浴びをしてから登城します。朝のうちに洗濯も済ませて弟たちの破れた服を縫い直し、最後に朝食を作り終えるのが五時半くらいです」
八幡「真冬なんかはさむそうだな……」
葵「まぁでも、すぐに朝食を作るためにかまどに火をつけますからお料理しながら体を温めるんです」
八幡「すげぇな……」
葵「さて、家でやることが終わると五時半には家を出て、速足で歩くと六時ぐらいに登城できます。お城で最初にすることは長屋で寝ている皆さんを起こして回る事です」
八幡「意外と大所帯だからな……朝の内は葵一人だけだから本当に大変だよな」
葵「皆さんを起こし、朝の訓練をなさっている間に私は全員分の朝食づくりと昼食の下ごしらえをします。そして館の掃除をしていると早八時。このころに登城なさる女中の方とお仕事を交代すると、起きて朝食を終えた八幡様と太兵衛さんのお仕事を手伝います」
八幡「俺早起き苦手なんだよね……朝のうちに資料とか分類して整理してくれるのはかなり助かるんだわ」
葵「十時くらいまでお手伝いをすると、そのあとは訓練を終えた皆さんの服をお洗濯です。これを私と昼食を作り終えた二人の女中の方に手伝ってもらって三人でこなします。それを十二時に終えると、今度は白木様と一緒に氏治様のお手伝い。二時半くらいからお二人の御遊びに混ぜていただき、たまに武術を習わされます……」
八幡「葵、運動神経あんまりよくないもんなぁ。武術習ってもほとんど上達しないし」
葵(剣技がさっぱり上達しない八幡様に言われたくない……)
葵「五時半くらいまでご一緒した後は八幡廓に戻り、一時間かけて皆さんのお夕飯の支度です。その後一時間の雑務と一時間かけて皆さんの服をもう一度洗います。帰宅は八時になり、ようやく一息つけます……」
八幡「……相当激務だな……家のことはどうするの?」
葵「家のことは弟たち任せなんです……水汲みとか家庭菜園のお世話、野草集めなんかをさせてます。それでもゆとりのある生活ができないので弟たちは毎日三足は草鞋を作ってから遊びに行くように言いつけているんです……弟たちには楽をさせてあげたいんですけど……」
八幡「胸が痛む……」
葵「八時半から九時にかけて夕飯を食べると、夕飯を作った時の残り火で水を温めて弟たちと一緒に体を流して九時半過ぎには弟たちを寝かしつけます。そして、十五夜の千五数日は夜も明るいので三十分以上は本を読んで御勉強です。寝るのは十一時くらいかな……?」
八幡「本当に休む暇なく働いてるんだな……俺にはとてもまねできない……」
葵「でも楽しいですし、私は幸せです! 氏治様や白木様にも優しくしていただいてるんですから、本当に幸せ者ですよ! これからももっと頑張って皆さんのお役にたてるように努めますね!」
八幡「なんかもう涙出てくるよこの子……」




