其の十二 実は名族
清幹「吾輩は大掾清幹である」
八幡「はぁ……?」
清幹「その方は名族名将に深い関心と知識があると聞くが?」
八幡「ぇっと……まぁ、それなりには?」
八幡『というか、誰だコイツ』
清幹「では、吾輩のことは知っておるな?」
八幡「……何回か領土問題で小田家と小競り合いしてますよね」
清幹「うむ。吾輩は氏治何ぞよりももっと苦労しておるからな。五歳で家督を継ぎながら天才的手腕を発揮して今まで領土の保全を守ってきた名将ぞ」
義重「単独じゃ全く守れてないけどな。援助も面倒だからもう江戸家と手を結ぶ故、次は戦場で会いまみえよう」
清幹「なんと!」
氏治「というか、貴方は誰?」
清幹「なんよ無礼な! この小娘が! 貴様と同じ関東八屋形の一家、大掾氏を知らぬとは言わせぬぞ!」
氏治「えっと……誰?」
八幡「あぁ! どこかで聞き覚えあると思ったらあれだ! 三十話で一瞬ちらっとだけ名前が紹介されてた奴だな! しかし、八屋形に大掾なんていたっけか?」
菅谷「大掾氏とは、長沼氏の嫡流が絶えて一時的に八屋形から外れた時に一瞬だけその栄華を笠に着ていた家名ですな」
氏治「なるほど! 成り上がりってわけね!」
清幹「どいつもこいつも吾輩を馬鹿にしをって! 大掾一族をなめるでないわ! 常陸各地に散った大掾一族が決起すれば佐竹も小田も一飲みよ! お主等が恐れた鬼真壁だって吾輩たち大掾一族の出なのだぞ!」
八幡「一族で優秀な奴は真っ先にあんたに見切りをつけてるがな」
清幹「一枚岩……一枚岩でさえあれば……」




