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其の十  神代でもよくあること


氏邦「……両兄上、父上はああ申されますが、本当に囲炉裏を囲ってただ座っているだけでよいのでしょうか?」


氏政「まぁそういうな弟よ。父上様でさえ敵わなければよもやそれまで。わしらが足掻こうと父上の足手まといになるだけぞ。ここはおとなしく御下知に従うのだ」


氏邦「さ、されど……」ウズウズ


氏照「しかし、氏邦の言いたいことも解ります。やはり守るべき民が戦渦に見舞われて酷い目に合っているというのにそれを尻目に我等だけのんびりお茶を飲むというのは心が痛むものです。それに、こうしていつまでも引きこもってばかりでは北条家の築き挙げた権威も弱体化しますし、武威も失墜していくでしょうから」


氏政「それもそうだな……しかし、武威や権威に目がくらんでホイホイと釣り出されてはそれはそれでまずい。むしろ、それが山賊どもの狙いかもしれぬしな」


氏照「なるほど……さすがは兄上。父上様に似てまいりましたな」


氏政「そ、そうか?/// まぁ、そういうわけだ氏邦。気持ちがいきり立つのは解るが、もうしばしの辛抱ぞ。今は耐えよ」


氏邦「で、ですが……父上! 父上様! 我々も何かすることがあるのではないのですか!? そんな囲炉裏で寝てないで何か言ってくだされ!」


氏政「……火の粉が飛び散って火達磨になりまするぞ……?」


氏康「ふぁあぁ……ぅむ。ったく、誰が火達磨じゃ。引き籠っていると権威が喪失する? 何を言っているのじゃお主等は。引き籠る事の何が悪い。和人であれば誰しも引き籠ることに何のためらいもいらないであろう。そういう血を継いでおるのだから」


氏照「は……どういう事でございましょう……?」


氏康「だから、なんでわしが引き籠ったからとそのように言われねばならんのだ。引き籠りの起源を遡れば神代まで到達する由緒正しき行いだというのに。ほれ、かの天照大御神だって引き籠りではないか」


氏邦「なるほど! さすがは父上にございますな!」


氏照「流石に我等の引き合いに天照大御神を出すのは如何なものかと思いますぞ……」


氏康「ほれ、天照だって長い間引き籠ったというのに権威が落ちたか? その神の御業の輝きに陰りでもさしたというのか? そうではなかろう。天照がやっていたことを我等が模倣して何が悪い。誰が謗れようものか!」


氏政『……呼び捨てにしてる……』


氏照『……その話の流れだと、最後には天岩戸は開けられてしまうのですが……』


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