表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/39

……………… 視聴覚室でライブビューイング応援

「紬、優生くん来たよ」

 ドアの方が見えたさくら先輩が言った。紬さんは部屋の真ん中のローテーブルの方に移動した。

「どうぞ」


 少し混乱したけど、納得もした。ボクは横になっているさくら先輩に声をかけた。

「大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃない。でも、ずっと悩んでた問題がやっと片付くと思ったら、スッキリする」

 さくら先輩は、よっこらせと起き上がって皆でローテーブルを囲んだ。

「起きていいんですか?」

「いいよ。まだ手術してないから」

 紬さんは少ししんみりした感じで黙っていた。


 ドアをノックして麻里さんがお茶と和菓子を持ってきてくれた。

「お持たせですが」

 言い終わるかどうかくらいで、ボクの方に向き直って、

「凄い、優生くん。和菓子とっても綺麗。秋を感じる」

 お茶碗ではなく飲みやすくマグに注がれたお抹茶と和菓子をテーブルに出しながら

「乱菊」「もみじ」「銀杏」「名月」

 あれ? 四人分? 自分も一緒にお茶タイム?

「優生くん、何? ツボってんの?」

 さくら先輩が聞いてきた。ボクは可笑しくなっちゃって笑いが止まらない。

「この前、悠人さんが同じようなこと言ってて。和菓子は芸術だとか。うちの母が繊細に違いないだとか……小太郎先輩と笑っちゃって」


「あら」

 麻里さんがさくら先輩を見た。

「この子、こたの?」

 さくら先輩も麻里さんに

「そう、こたの」

 紬さんが

「加賀美小太郎君でしょ」

「紬、ごめん。麻里さんに釣られた」

「もう」

 って言いながら、和菓子を食べて、お抹茶を飲む紬さんに全員続いた。

「美味しい。手術頑張れるわ」


「ただいまー。あ、こんにちは」

 中学生の男の子が部屋を覗いた。

「おかえりー、(かえで)

「え? 美味しそ」

「楓のも台所にあるから……優生くんにいただいたのよ」

 麻里さんはそのまま台所に行ってしまった。

「さくら先輩、弟さんですか?」

「うん。今度嶺南を受験するよ。今中学の弓道部だから、受かったらよろしくね」

「こっちの中学、弓道部あるんですね、いいなぁ」

「海が近くて風強いけどね。よく紬が風で持ってかれて、隣の的に中ててた」

「あれ、笑っちゃいますよね。ボクも最初何回かやりました」

「風もないのに?」

 紬さんが会話に入ってきた。

「風もないのにですよ。一瞬シーンとして、皆が笑うんですよ。もうそんな事はないですけどね」


 入学して半年が過ぎようとしている。その間にボクは初段が取れるくらいになった。さくら先輩は半分くらい病気のせいで部活動ができなかった。学校もずいぶん休んだりしていたらしい。それがもう心配いらなくなるのはいいことだ。

「どうしてもなら、大金がかかるけど自分の子も持てないこともないらしい。でも楓もいるから、血は繋げるし、もともと紬と生きてくって決めてたから。幼稚園の時から」

「でも、手術は怖いよね」

 また紬さんがしょんぼりし始めた。

「もう、紬、毎日来て泣くのやめて。笑ってくれないと元気出ないじゃん」

「え、ちょっと。いちゃつくんなら、ボク帰りますよ」

「「いちゃついてないでしょ!! 」」

 あ、元気になった。


 次の週の初めにさくら先輩は手術を受けた。紬さんは学校を休んで付き添っていた。

 手術は癒着ほぼなく、経過も良さそうで、三日目には歩いたりしてるそう。この調子なら思ったより早く復帰できそうって、紬さんが喜んでた。


「行ってらっしゃい。良い報告を待ってます。ネット配信で応援してますね」

 本州北部での開催の為、小太郎先輩は木曜の午前までで公休扱いで学校から出発した。翌金曜から遠的の予選、決勝トーナメント、近的の予選、決勝トーナメントが行われる。月曜の閉会式後まで帰れないらしい。


 金曜は授業があるのでところどころしか配信を見られなかった。それでも、見ている時に写った先輩は一メートルの的の真ん中の十センチの十点の部分にズバズバ中てていた。六十メートル手前の距離から。全国に小太郎先輩の勇姿が配信されてるんだと思うと複雑。かっこいいから全国にファンができちゃう。

 

 二日目の土曜日は朝から部室で応援、大きめ画面のタブレットとポケットWi-Fiを持ってきた先輩を「神」として、配信を見る。


 顧問が視聴覚室を開けてくれたので移動する。視聴覚室のプロジェクターで見る。プロジェクターの大きな画面いっぱいが小太郎先輩だ。すごい。

 視聴覚室には他の先生や校長先生も見に現れた。見ている全員で的中の時の、『よし!』視聴覚室なら、どんなに大声でも大丈夫だ。

 遠的の結果は三位。三位は二組いる。小太郎先輩は全部を10点に中てていたけど。団体戦なので、仕方ない。

 

 日曜日、また学校の視聴覚室へ。近的も小太郎先輩は完璧だった。皆中。放送の解説の人はあんまり自分の感想は言わないんだけど、小太郎先輩を「すごいですねぇ」って言った。個人成績は出ないんだけど、一つも外していない人は他にいないと思う。近的の決勝トーナメントは最終日に開催だ。


 邪魔かもと思って連絡していなかった。でも、我慢できずにチャット送る。

「学校の視聴覚室のプロジェクターで土日は応援しました。小太郎先輩の大活躍で、盛り上がってました。

 さくら先輩は経過良好なようで、紬さんも喜んでましたよ。

 慣れない場所で何日も過ごすの、大変ですね。あと一日、頑張ってください

 お忙しいだろうから、返信無用です」


「優生くん、連絡ありがとう。応援もありがとう。もうすぐ帰ります。

 斎藤桃子さん、経過順調らしいね。僕にも連絡きました。負けるな、と。あの人、適度に弱ってる方がいいよね」

 内緒、のスタンプ。

「あ、ちょっと待ってね」


「今、同室の佐々木さんに、彼女とチャットしてるのかって聞かれちゃった」

「え? 二人部屋なんですか? 」

「協会でホテルとってくれてるから、僕は佐々木さんと一緒で、もう一人の選手は控えの選手と一緒。佐々木さんはインターハイで戦った因縁の相手。三年生で、彼女がいるって言ってた。夜、部屋の外まで出て通話してる」

 佐々木さん、いいなぁ、小太郎先輩と同室。

「聞かれて、なんて答えました?」

 意地悪で聞いた。その答えでビックリすることになったけど。

「彼女じゃないけど、好きな子って言った。あ、消灯だ。明日、また連絡するね」

 おやすみってスタンプ。ボクも返した……。

 


 

 


 


 

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ